私的標本

玉置標本によるブログです。 捕まえて食べたり、お出かけをしたり、やらなくても困らない挑戦などの記録。

爪切男『死にたい夜にかぎって』を読みました

こだまさんの『ここは、おしまいの地』(感想文は下のリンクから)とあわせて購入しておいた、爪切男さんの『死にたい夜にかぎって』をようやく読んだ。

blog.hyouhon.com

内容はアマゾンのコピペをどうぞ。

「君の笑った顔、虫の裏側に似てるよね。カナブンとかの裏側みたい」――憧れのクラスメイトにそう指摘された少年は、この日を境にうまく笑えなくなった。

Webサイト『日刊SPA!』で驚異的なPVを誇る連載エッセイ『タクシー×ハンター』。その中でも特に人気の高かった「恋愛エピソード」を中心に、大幅加筆修正のうえ再構築したのが、この『死にたい夜にかぎって』だ。

出会い系サイトに生きる車椅子の女、カルト宗教を信仰する女、新宿で唾を売って生計を立てる女etc. 幼くして母に捨てられた男は、さまざまな女たちとの出会いを通じ、ときにぶつかり合い、たまに逃げたりしながら、少しずつ笑顔を取り戻していく……。女性に振り回され、それでも楽しく生きてきた男の半生は、“死にたい夜”を抱えた人々の心を、ちょっとだけ元気にするだろう。

作者である爪切男は、同人誌即売会・文学フリマでは『夫のちんぽが入らない』主婦こだまらと「A4しんちゃん」というユニットを組んで活動。頒布した同人誌『なし水』やブログ本は、それを求める人々が行列をなすほどの人気ぶりだった。

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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同棲していた彼女と別れるシーンから始まり、そこへと繋がっていく6年間の日々を中心に綴られた自伝的恋愛小説。

なんやかんやあって別れた恋の話なので『その恋、最高の時間の無駄遣い。』というコピー。

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高校時代、とある利己的な理由で彼をビンタをする学校一の美少女。そしてあるタイミングで言い放った上記写真にある薄紫の文字。序盤に登場するこの話で、思いっきりストマックをクローされて胃がキリキリした。すげえ。

 

初体験は車椅子の女性。ただし冬木弘道そっくり。二度見しても冬木にそっくり。ラブホテルへと向かうシーンに、あえて『時はきた。』と橋本のセリフをぶち込んでくるところに、つい蝶野正洋のように吹き出してしまった。ところでいつの頃の冬木だろね。

作者はプロレスのファンであり、レスラーの固有名詞やセリフ、あるいは技名がところどころに使われている。もちろん知らなくても楽しめるのだが(冬木弘道の画像検索は見ておいてほしいが)、私も学生時代からゴング、週プロを流し読みするくらいは好きなので、ニヤリとできるシーンが割り増しされていた。

プロレス特有の考え方に『受けの美学』という言葉がある。ヒールなら技をしっかりと受けることで相手を光らせる、あるいはベビーなら痛めつけられることで己への声援を集める。爪さんの人生はまさに受けの美学。避けようのない困難に襲われる日々、女性に翻弄される姿、それをすべて受けてみせることで己の美学に則った文字に残してくれたのだ。知らないけど。

 

同棲していた彼女との別れから始まるので、なんで二人は別れたのか、そこを探しながら読むことになる。推理小説でいったら、犯人が冒頭に書いてある本だ。あるいは主人公が死ぬと分かっている話、または年表を先に出しちゃうファイブスター物語。

どうせ別れる二人の恋愛、絶対にハッピーエンドにならないストーリーを読むという6時間の無駄遣い。この本を読んで知ったというよりも、本人から直に聞いたような気になるエピソードの数々を知れて、私にとっても最高の無駄遣いとなった。

死にたい夜にかぎって

死にたい夜にかぎって

 

物語はタイトルにある『死にたい夜にかぎって』な、最高で最悪のエンディングを迎えたと思ったら、さらに後書きを読んでひっくり返ることとなる。そうくるか。

読み終えて、またすぐに最初から読み返してしまった。

 

 

 

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