私的標本

玉置標本によるブログです。 捕まえて食べたり、お出かけをしたり、やらなくても困らない挑戦などの記録。

アンデスの乾燥ジャガイモ、チーニョを作る

※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2010年9月14日に掲載した記事の転載です。

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ジャガイモのふるさと、アンデスで作られているという乾燥ジャガイモ、チーニョを作ってみよう。

収穫したジャガイモを保存したい

六月に我が家の家庭菜園で収穫したジャガイモがなかなか減らない。もちろんちょくちょく食べてはいるのだが、ダンボール二個分のジャガイモなんて一般家庭では消費量に限度がある。特に小さいジャガイモ、これが全然減らない。

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このダンボールの下に、もう一段ジャガイモが詰まったダンボールがある。

このままだとせっかく収穫したジャガイモから有毒な芽が出たり、腐ったりする恐れがある。そこで保存方法をいろいろ調べてみたところ、ジャガイモ発祥の地であるアンデス地方でつくられているチーニョという乾燥イモに行きついた。

チーニョという単語、はじめて聞くけどなんとなくおいしそうな感じがする。日本と地球の裏側に位置するアンデスの保存方法を、ちょっと試してみることにした。参考文献は伊藤章治さんが書かれた「ジャガイモの世界史」。きっとオイチーニョ。

ジャガイモの世界史―歴史を動かした「貧者のパン」 (中公新書)

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ジャガイモを凍らしたり溶かしたりする

チーニョの作り方は、乾期の頃にジャガイモを外に出しておくことから始まる。夜になると氷点下まで気温が下がるためジャガイモは凍りつくが、昼間には解凍される。これを数日繰り返すと、ジャガイモを軽く押すだけで水分が出てくるようになるらしい。

ジャガイモといえば、冷凍できない野菜といわれているが、チーニョは冷凍と解凍を繰り返すことでつくられるのだ。

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日本の夏だと外に出していても夜に凍らないので、冷凍庫で強制的に凍らせる。

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半日凍らせたら、干し網に入れてベランダで解凍。アンデスだと昼間でも15度くらいだが、埼玉は35度を余裕でオーバー。

冷凍庫と干し網を数日間行ったり来たりさせると、見た目はそれほど変わっていないのだが、持ってみると中がスポンジ状になってきたのがよくわかる。

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見た目の変化はすくないけれど、フニャフニャと柔らかくなった。

水分をギリギリまで絞り出す

この冷凍と解凍の繰り返しでフニャフニャになったジャガイモ、軽く押すだけで水が出てくるらしいのだが、実際にやってみると予想以上にピューピューと水が出てきておもしろい。フリーズドライってこういうことなのかな。

このジャガイモを握りつぶせば、「ものすごく握力の強い人」という一発芸ができそうである。今度やろう。

ちなみに水分と一緒に、太陽を浴びて緑色になってしまったジャガイモが持つ毒素ソラニンも抜けけるため、保存だけでなく毒抜きも兼ねているのだ。

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軽く押すと、皮の切れ目から水分があふれ出す。

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予想以上の水分量。ジュース作りとは逆で、この搾った水分は使わない。

アンデスではこれを水分が抜けきるまで屋外に放置したらチーニョの完成である。日本では冷凍庫で冷凍、ベランダで解凍、台所で脱水を繰り返して、手間暇かけて水分を抜いていく。

そしてできあがったのが、皮の切れ目から真っ黒になったジャガイモが見え隠れする自家製チーニョ。どうにも日本人には食べ物に見えないが、アンデスに住む人が見た干しシイタケや乾燥わかめみたいなものなのだろう。匂いはジャガイモ独特の土とでんぷんの香りの中に、若干のアンモニア臭が混ざっている感じ。

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予想以上に黒い。そしてアンモニア臭い

チーニョは水に一昼夜漬けて戻して料理する食材なのだが、戻してみるとアンモニア臭がパワーアップしていた。鍋に入った肉ジャガがこの匂いだったら絶対に食べないレベル。

本物のチーニョを見たことも食べたことがないので判断が難しいのだが、どうやらジャガイモが変な発酵をしてしまったっぽい。やはり高温多湿の日本の夏はチーニョ作りに向いていないか。

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これを食べる勇気はないので、畑に帰っていただきました。すまん。

やり直してみる

さて普段だったら失敗して終わりにするところだが、ジャガイモはまだまだたくさんある。せっかくなのでちょっとやり方を変えて再チャレンジしてみることにした。もはや目的はジャガイモの保存ではなくて、ただ単純にチーニョが食べてみたいのだ。

冷凍庫で凍らせるところは同じだが、解凍を炎天下のベランダで何時間も干すのではなく、電子レンジの中にいれて(電源はいれないで)三時間くらい溶かし、またすぐ冷凍庫に入れる。そして凍ったらまた電子レンジの中へ入れ、一日に三回くらい冷凍と解凍を繰り返す。

電子レンジの中にいれたのは、チンするためではなく、家の中で一番無菌に近い場所のような気がしたからだ。

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数日経ったものがこれです。

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ジャガイモなのにブシュっと水分がでる感覚が不思議。

数日経ったら前回と同じようによく絞って水分を出し、また冷凍、解凍、脱水の繰り返し。外に干さないのでジャガイモがなかなか乾かないが、一つずつキッチンペーパーに包んで体重をかけたりしてどうにか水分を飛ばしていく。

すると今度はまったくアンモニア臭くないチーニョができあがった。

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まだちょっと水分が残っているけれどね。

自家製チーニョを食べてみる

本来の目的である常温保存をするには水分量が多すぎるチーニョだが、日本の夏につくるのはこれが限界。保存はしないでさっさと戻して食べてしまおう。

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水に漬けて一晩置き、手で皮をむく。今度はアンモニア臭なし。

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この渋皮の残ったクリみたいなのが戻したチーニョ。皮が破れて空気に触れていた部分が真黒でちょっと不安。

料理方法は深く考えずにベーコンと炒めてみた。細切りにしたチーニョはナスのようなビジュアルだが、味はもちろんナスではない。かといってジャガイモともちょっと違う風味とシャクシャクした歯ごたえがする。

ジャガイモ独特のねっとり感がまるでないので、正体を隠して出せば、これがジャガイモとはわからないだろうな。しいてあげれば大根もちかヤーコン(マニアックですが)の食感が近いかな。

ジャガイモだとおもわなければ、これはこれでなかなかおいしい。

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断面は予想以上にジャガイモ。

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アンデスの人よ、チーニョってこういうものであっていますかね。

ついでにもう一品、コンソメスープをつくってみたのだが、大きめに切ったチーニョは一時間以上煮込んでもまったく固く煮崩れしなかった。どうやらチーニョは煮込み料理に向いていそうだ。

今度またチーニョをつくったらカレーにでも入れてみようかな。おでんだねにもいいかもね。

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いくら煮込んでも歯ごたえがしっかりしている。

手作りチーニョはものすごくおいしい、というものではないけれど、その食感は独特でちょっと癖になる感じ。保存目的や自分が食べるためだけにまたつくるのはちょっと手間だけれど、誰かに食べさせるためだったら、また作ってもいいかな。

ちなみにチーニョとほぼ同じものが、山梨や長野でも昔から食べられているそうです。

 

 

 

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