私的標本:捕まえて食べる

玉置標本によるブログです。 捕まえて食べたり、お出かけをしたり、やらなくても困らない挑戦などの記録。

山形の夏の味、だしを作ろう

※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2011年8月4日に掲載した記事の転載です。

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大学時代は山形に住んでいたのだが、そこの食文化には、埼玉育ちの私がみたこともない食べ物がいくつもあった。その中でも、この時期必ず思い出すのが、「だし」である。

「だし」とはなにか

バイト先だった結婚式場の食堂で、M田係長がご飯にかけて食べていたのが、私とだしとの初遭遇だった。

ここでいう『だし』とは、カツオやコンブのエキスではなく、キュウリ、ナス、ミョウガなどの生で食べられる夏野菜を細かく刻み、醤油などで味をつけたもの。みじん切りの浅漬けみたいなものといえば、なんとなく伝わるだろうか。

浅漬けをみじん切りにしたものではなく、みじん切りを浅漬けにしたものというのがポイントだ。

家庭によって使う野菜や味付けが違うのだが、山形ではとてもメジャーな存在。誰もがご飯や豆腐にかけて食べる夏の常備菜なのである。

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山形ではスーパーなどでも売っています。メガ盛!

学生時代は一人暮らしだったので、だしを食べる機会はあまりなかったのだが、今考えると、冷蔵庫に冷えたおいしいだしが入っていたら、夏場はどんなに幸せなことだろう。今こそ我が家でも実践するべきではないだろうか。

作り方はなんとなくわかるので、何度か作ったこともあるのだが、どうも納得のいく味にならなかった。そこで、「山形の家庭の味」というやつを教えてもらおうということで、山形在住の現役主婦に、作り方を習ってきた。

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ちなみに雰囲気を出すために、撮影はたがまや村でおこないました。

なっとう昆布という秘密兵器

山形生まれ山形育ちの友人が使った野菜は、キュウリ、ナス、ミョウガ、シソ。だしとしてはスタンダードなものといえるだろう。

まずはこれを細かく刻むのだが、どれだけ細かく刻むのかというところにも、各家庭ごとに好みがあるらしい。

ちなみに以前、楽をしようとしてフードプロセッサーで刻んだら、細かくなりすぎてしまい、青臭い野菜ジュースみたいなものができて、大変つらい思いをした。ここは面倒でも包丁でみじん切りにするべきなのだろう。

ここで友人が取り出したのが、なっとう昆布という秘密兵器。その存在は知っていたが、実物を見るのは初めてである。北海道産のがごめ昆布とやらを粉末にしたもので、これが入るとだしに強烈な粘りがでるのだ。

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だしを作るためだけにあるといっても過言ではない存在。

この日集まった山形県民達にリサーチしたところ、このなっとう昆布はどの家庭でも入れるというものではなく、決して入れないサッパリサラサラ派も存在するらしい。

またなっとう昆布ではなく、軽く湯がいたオクラやモロヘイヤに粘りを求めるという流派も。あるいはなっとう昆布だけでは飽き足らず、さらにひき割り納豆も加えてしまうという、ネバネバ命の派閥もあるらしい。

山形のだし、シンプルな料理だからこそ、各家庭で強いこだわりがあるようである。

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粉末状になったなっとう昆布。

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水をたっぷりと加えて、すぐに水を切るという工程を経てから、野菜に加える。

だしにはダシの効いた味マルジュウ醤油

続いては味付けだが、ここで友人が取り出したのが、山形でつくられている味マルジュウ。これは普通の醤油(マルジュウ醤油)に、かつお節、宗田節、さば節、煮干しのダシがたっぷりと入ったもので、このダシの旨みが、だし作りのポイントなのだ。

ダシとだしで訳がわからないですね。

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気にいったので、お土産に特大サイズを購入して帰りました。

これも例によって、家庭ごとに普通の醤油だったり、めんつゆだったりとバラバラなのだが、私はこの味マルジュウというダシ醤油が気にいった。ちなみにこのダシ醤油がない場合は、普通の醤油に鰹節やカツオだしを加えるそうだ。

友人の話だと、山形名物の芋煮もこのダシ醤油で作るのが正しいのだとか。いわれてみれば、馬見ヶ崎川の河原で食べた芋煮の味がする(ごめん、本当は覚えていない)。刺身やソーメンなどもこの醤油で食べるそうで、ちょっと舐めさせてもらうと、確かに魚のダシがタップリ。市販のめんつゆほど甘くはないところが特徴的だ。

これを購入して以来、我が家では普通の醤油、ダシ醤油、めんつゆの3種類が、料理によって使い分けがされるようになった。

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ダシがたっぷりなので、ついペロペロと舐めてしまう危険な醤油なのである。

チューブに入った豆腐に乗せて完成

だしに味マルジュウに加えたら、最後に味の素をパラパラ。これでなっとう昆布、味マルジュウ、味の素の3種類の旨みが加わった訳だ。どうやら友人が作るだしは、旨みの濃さに重点を置いたタイプらしい。もはやだしというよりダシである。

これをよく混ぜたら、友人宅流のだしが完成。本当は一晩置くと味がよくなじむそうだが、そんなに待てる訳がない。

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なっとう昆布の強烈な粘りが斬新。

これを乗っけるのは、これまた山形独特のチューブに入った豆腐。ベロンベロンと粘りまくるダシたっぷりのだしをたっぷりと乗っけていただこう。

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こげな豆腐ははじめてみただよ。チューチュー吸いたい。

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なっとう昆布の粘りでだしがモッチリしている。

だしというと、サラサラしたあっさり系の食べ物という印象だったが、このだしは山芋でも入っているかのような粘り気と多重構造の旨みがたっぷり。夏バテ気味の疲れた体に、しっかりとスタミナをつけてくれそうな味なのである。

山形のだし、ごちそうさまでした!

イタリアンなだしを作ってみた

家に帰って、さっそく私もだしを自作する日々を過ごしている。普通に作っても十分おいしいダシなのだが、今日はちょっと変化球でイタリアンにチャレンジ。

材料は家庭菜園から採ってきた、キュウリ、ナス、トマト、ピーマン。

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今年も畑で採れる夏野菜で冷蔵庫がいっぱいです。

たっぷりのオリーブオイルにバルサミコ酢、塩、胡椒。これだけではだしっぽくないので、そこに山形から仕入れてきた味マルジュウをジョボジョボ。

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私の祖父がイタリア人なので、たまにこういうのが食べたくなります。はい、ウソです。

このイタリアンなだしを、冷たくしたカッペリーニ(極細パスタ)にたっぷりとかければ、「田舎っペリーニ」の完成だ。山形はいい意味で田舎なので、リスペクトの意味を込めてネーミングさせていただいた。

はい、実はネーミング優先の料理です。

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暑い日には最高。

味マルジュウのダシが効いたイタリアン。山形の個人経営イタリアンレストランに実際ありそうなメニューである。

食べながら、なんとなくダニエル・カールを思い出したが、彼はアメリカ人だったかな。明日はごま油とピータンを使った、中華風だしを作ろうと思う。

 

 

 

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