私的標本:捕まえて食べる

玉置標本によるブログ『私的標本』です。 捕まえて食べたり、お出かけをしたり、やらなくても困らない挑戦などの記録。

生魚の燻製に挑戦!お手軽スモークサーモンの作り方

※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2012年12月17日に掲載した記事の転載です。

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そろそろクリスマスシーズンということで(という訳でもないのだが)、スモークサーモン作りに挑戦してみたのだが、これが想像以上に簡単でおいしかった。

フィーリングで作るスモークサーモン

本日挑戦する料理は、スモークサーモンである。結婚式やクリスマスのディナーとかのオードブルで出てくる、例のあれだ。

そんなシャレオツ(オシャレを業界風に言ってみました)なものが我が家で作れるのかよという気がしなくもないが、要するに塩漬けにしたサケを燻せばいいんだろというくらいの軽い気持ちで、今回は挑んでみることにする。

まずメインの材料となるのは、「アトランティックサーモン刺身用」という名称で売られていた、ノルウェー産サーモンの切り身。養殖かつ解凍。ついでに値段を言えば418円だ。

本当は丸ごとのサケから豪快に作るべきなのだろうが、家庭で消費するだけなら、これくらいの量で充分だろう。

日本産の生サケでもいいような気もするが、スモークするとはいえ、ほぼ生の状態で食べるには寄生虫の問題が不透明だったので、刺身用として売られているものを買ってきた。

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本当は釣ってきたサーモンで作りたいのだが、それはまた今度カナダあたりで。

次に用意するのが、漬けるための調味料。ピックル液とかソミュール液とか呼ばれる液体状の漬け汁を使う方法もあるが、ここはより簡単にということで、塩、砂糖、そして家にある適当なハーブ類を混ぜたものを、サーモンにまんべんなく塗りたくるという方法を採用することにした。

使用した調味料は、塩、砂糖、胡椒、セージ、バジル、ディル、コリアンダー、パセリ、タイム、コショウといったあたりだが、このあたりは別になんでもいいような気がする。日本酒や味噌の味が蔵に住み着いている菌によって味が変わるように、各家庭にあるハーブによってスモークサーモンの味が違ったって、それは個性の範囲というものだ。

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まあ、雰囲気で好きなハーブを使うさ。

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よく混ぜた調味料を、サーモンの全体に塗りたくる。

続いては、これを厚手のキッチンペーパーで二重に包んで冷蔵庫で一晩寝かす。

調味料を染み込ませつつ、余計な水分を抜くという、加工食品にはつきものの工程だ。

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結構水分が出ますよ。

ということで、スモークサーモン作りの初日の作業はこれにて終了。ただそれだけだとつまらないので、せっかくなので、ついでにいろいろな燻製作りにも挑戦してみることにする。

まず用意したのは、贅沢に富山産の寒ブリ、といきたかったが予算の都合で割引になっていた千葉産の刺身用ワラサ(一回り小さいブリ)。これはサーモンと同じ処理をしてみた。

さらに水切りをした絹ごし豆腐と、調味料を少しまぶしてキッチンペーパーに包んだベビーホタテも用意。これはついついつまんでしまって、だんだんと数が減っていった。

スモークサーモン作り二日目

そして翌朝、いい感じに水分の出たサーモンとワラサは軽く水で洗ってキッチンペーパーでよく水分を拭き取り、他の材料と一緒にラップをしないで冷蔵庫に戻し、夜まで乾燥をさせる。

たっぷりと塩を使ってサーモンを漬ける方法の場合、ベーコン同様に塩抜きの必要があるようだが、今回くらいの量だったら、軽く水で流すくらいでちょうどいいはずだ。

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この状態で冷蔵庫でさらに乾燥をさせる。

スモークサーモン作り二日目の夜、ここでようやくスモークの開始である。スモークサーモンの場合、ベーコンなどのように燻しながら過熱をする必要がないので、スモークウッドという、煙は出るけれど熱はあまり出ない、おがくずの塊みたいなものを使って、簡易式の冷燻(温燻かな?)的なものを試してみよう。保存目的ではなく、あくまで味付けとしての燻製である。

ちゃんとした冷燻のように冷たい煙で燻すという訳でもないし、熱い煙で火を通すという訳でもないので、冷燻でも温燻でもない、「ぬる燻」と呼ぶのはどうだろうか。ゆるキャラみたいでかわいいし。

このスモークウッドをどのくらい使えばいいのかがよくわからなかったのだが、そんなに長く燻す必要もなさそうなので、3センチほど切って使うことにした。これでたぶん1時間くらいは持つはずだ。

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スモークウッドを使う分だけ切って使います。

燻製の道具について

燻製をする道具は市販品でも段ボールでもなんでもいいのだが、私は安物の中華鍋、丸い金網、ステンレスのボールを、同じ直径で揃えたものを最近は使っている。これなら毎回組み立てる必要もないし、段ボールのように燃える心配もないので、燻製する量が少量であればおすすめの方法だと思う。

まず中華鍋にアルミホイルを敷いて、火をつけたスモークウッドを置き、金網の上にスモークする食材を並べる。ここでスペースがまだあったので、急遽市販の安いソーセージと、チーズを追加してみた。チーズは溶けてしまいそうだったので、オーブンシートを下に敷くという心配りをしてみた。

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これでスモークサーモンができるはず。

ガスコンロの上でやっているが、場所として使っているだけでガスで加熱はしていない。あとはステンレスのボールで蓋をして、たまにスモークウッドの火が消えていないかどうかを確認しながら(けっこう消えがち)、1時間ほど燻す。

1時間という時間に根拠はないが、今回これを食べてみて、煙の味が薄かったり濃かったりしたら次回のスモーク時間を調整していけばいいだけだ。流行の「DIY」ということで。

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ガスコンロの上でスモークしているけれど、換気扇が近いからここでやっているだけで、コンロの火は使っていない。

スモークを開始してから一時間、部屋の空気清浄機が赤いシグナルを出し続けた末に、無事スモークは完成した。

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どうしても部屋が煙臭くなるので、可能なら外でやったほうがいいですね。

これをそのまま食べてもいいのだけれど、ちゃんとした冷燻と違ってスモークウッドと材料の距離が近いため、スモークサーモンとしては温度が微妙に生ぬるくなってしまっているというのと、煙臭さを落ち着かせてからいただいた方がうまいらしいので、さらに冷蔵庫で一日寝かせる。

確かにベーコンも作ったその日よりも翌日のほうがおいしいので、ここはグッと我慢をしておこう。ベビーホタテをつまみ食いしたら、スモーキーでおいしくなっていたよ。

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ここからさらに一日待たされる訳ですよ。

三日目にしてスモークサーモンの完成!

塩漬け、乾燥、スモーク、熟成の工程を経て、作り始めてから48時間で無事スモークサーモンをはじめとした簡易式生燻製の完成だ。刺身としての賞味期限は切れているぜ。

スモークサーモン作り、刺身用のサーモンを使えば難しい工程はまったくないのだが、なかなか時間は掛かる料理ではある。この手間が味に反映されていてればうれしいのだが。

まずは本命のスモークサーモンからいただいてみよう。ここはスモークサーモンらしく薄切りにすべきところだったのだが、普通の刺身感覚で切ってしまったのが悔やまれる。慣れないことをすると、こういうところでミスがでるね。

味付けはそのままでもいいのだが、せっかくなのでディルとオリーブオイルを掛けてみた。今のところ、見た目的には切り方以外大成功である。

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おいしそうにできたのではないでしょうか。奥はスモークワラサ。

さて肝心の味なのだが、これが想像以上にちゃんとスモークサーモンになっている。塩加減も適当にやった割にはちょうどいいし、スモーク加減もばっちり。オリーブオイルを垂らしたことで、口当たりが滑らかになったのも正解だったようだ。

これはやばい。ついつい久しぶりにワインの栓を開けてしまった。

スモークサーモン以外の燻製もおいしい

もう一品のワラサのスモークもばっちり。わかりにくいたとえで申し訳ないが、昔チョウザメのスモークというものを食べたことがあるのだが、その味に似ている。魚のスモークといえばサーモンだが、ワラサのようにそこそこ脂の乗った白身魚のスモークというのも、ありなのかもしれない。これはどこかの地方の新名物として流行ってもいいレベルの味だ。サーモンに比べると、こっちの方が魚の生臭さが感じられるが、それが日本酒を欲するのである。

おまけで作ったそのほかのスモークの味だが、一番驚いたのがチーズ。普通のプロセスチーズをただスモークしただけなのだが、これがびっくりするくらいにおいしくなっていたのだ。これだけだったら調味料に漬けたりする手間は一切ないので、思いついたときにすぐ作れるのがうれしい。なるほど、これが本物のスモークチーズの味なのか。

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スモークチーズってこんなにうまいのかと驚いた。

ベビーホタテはここにくるまで何回もこっそり試食していたのだが、なかなかの仕上がりである。調味料をもう少し多めに漬けて、もう少ししっかりとスモークさせたらウイスキーに合いそうだ。

ソーセージは、普通のソーセージに煙の香りとパリッとした皮の歯ごたえが加わり、3割おいしさがアップしたという感じ。ただ、ソーセージは冷たいとおいしくないので、これをさらに焼くとベターかな。

豆腐に関しては、個人的には煙臭さとの相性があまりよく感じられなかったので、燻さずにわさび醤油で食べればよかったかなという感じ。もっとしっかり水切りをして、長時間スモークすると、また印象が変わるのかもしれないけれど。

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それぞれの食材に合わせた燻製時間をマスターしたい。

燻製というと、なかなか大掛かりなアウトドア料理というイメージが強いけれど、今回のスモークサーモンのような簡易式冷燻に関しては、時間さえかければ、ちょっとした道具と手間で、簡単に作れることがよくわかった。まあ、今回たまたま成功しただけかもしれないけれど。

それでもサーモン以外にもいろいろと応用が利きそうなので、家に人が集まるときや、魚が釣れ過ぎた時にでも、またチャレンジしてみようと思う。

 

 

 

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