私的標本:捕まえて食べる

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粟島観光のススメ3:粟島の食、わっぱ煮、芋の花もち、イモダコ

※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2013年10月29日に掲載した記事の転載です。

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粟島観光シリーズの最終話となる第三回では、周囲23キロしかない離島での「食」についてレポートします。

粟島には米と肉がなく、野菜と魚がある

これまでの粟島観光記事を読んでいただいた方はもうよくご存知のように、粟島はとても小さい島なので、食べ物は採れるものと採れないものがはっきりしている。

まず島には田んぼがないので(昔はあったらしい)、米がとれない。その代り畑はたくさんあり、ほとんどの家庭で野菜を栽培しているので、自給率はとても高い。

特に粟島の土はジャガイモ栽培に適しているそうで、粟島産のジャガイモは知る人ぞ知る名品になっているそうだ。もちろんジャガイモ以外の野菜も当然おいしい。

しかし漁協はあるけど農協はない島なので、島外への野菜の出荷は基本的にしていないため、島に来ないと粟島産の野菜は食べられないのだ。

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田んぼはないけれど、畑は島内にたくさんある。

そして馬がいる牧場はあるけれど、養鶏場や養豚場などがないので、肉、卵、牛乳といったものは島では採れない。もちろん本土から運んできているので、お店に行けば売っているので生活には困らないが。

肉や卵が採れない代わりに、当然ではあるが島全体が海に囲まれているので、海産物はたくさんとれる。特に春にとれる粟島のタイはブランド品となっており、その白子は絶品なのだとか。

そういった土地柄なので、民宿で出される料理は、島で採れた魚介類と野菜のオンパレード。肉好きには勧められない島だが、魚や野菜好きにとっては、毎回の食事がとても楽しい島なのである。

今回の旅では夕飯を二回とも民宿で食べたのだが、島には居酒屋もいくつかあるようなので、次はぜひそっちも攻めてみたいと思う。

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民宿での晩御飯。ヒラスズキの煮付けが絶品だった。

粟島限定発売の日本酒もある

人によっては旅の目的ともなりえるお酒に関してだが、粟島には酒蔵がないけれど(田んぼがないので当たり前だが)、粟島の水で仕込んだ「粟島」とうい日本酒が島内限定で売っており、これが実に飲みやすくて、まさに端麗辛口という酒だった。スルスルといくらでも飲めるという感じ。

また今回は飲む機会がなかったが、島名産のジャガイモを使った焼酎「んっぽん」というのもあるそうだ。

粟島に行ったら、昼間からお酒を飲んで、だらだらするだけでも、きっと楽しいと思う。

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粟島の水で仕込んだ日本酒「粟島」。「越の寒中梅」や「長者盛」などの人気銘柄をつくっている小千谷市の新潟銘醸が製造している。

粟島名物「わっぱ煮」

粟島の名物料理といえば、わっぱ煮が有名らしい。

「わっぱ」とは、木でできた丸いお弁当箱のような器のことで、このわっぱに焼いた魚、味噌、ネギ、水を入れて、そこに焼いた石を放り込んで煮るという、豪快な料理がわっぱ煮だ。

鍋を使わずに暖かい汁ができるので、漁師などが浜で作る食事として昔から食べられていたようだ。

わっぱ煮は島内の食堂や民宿で食べられるが、今回は磯ダコ取りツアーの表彰式にて、海辺にあるわっぱ煮を作るための広場でいただいた。

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山形に芋煮をするための場所があるように、粟島にはわっぱ煮を作るための場所がある。

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わっぱに水とネギと味噌と焼いた魚を入れておく。

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そこによく焼けた石を入れて、一気に沸騰させるという豪快な調理方法。

魚のダシが効いた絶品味噌汁

この日の昼食は、わっぱ煮とおにぎりという組み合わせ。わっぱ煮とは、ようするに魚が入ったアツアツの味噌汁なのだが、こういう素朴だけれど味わい深い料理をを屋外で食べられるのは、最高の贅沢だと思う。

粟島の海辺に転がる石(玄武岩という鉄分が多くて固い石でないと、割れたりはぜる危険があるのでNG)を入れているためか、焼いた魚が入っているためか、普通の味噌汁では味わえない、わっぱ煮独特の「海を焦がしたような」風味がうれしい。

わっぱ煮に入っている魚は人によってバラバラのようで、私のお椀はウマズラハギとイシダイだったが、人によってはカサゴやメジナなどが入っていたようだ。これをチマチマと小骨を取りながら、ほじくるように食べるのが楽しいのである。

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おにぎりとわっぱ煮という最強の組み合わせ。

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まず出てきたのが、ウマズラハギ。

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さらにイシダイの子供がデーンと丸ごと入っていた。豪快!

このように、人に作ってもらったわっぱ煮を食べるのもおいしいが、泊まった民宿のおじさんの話によると、たき火をしながら釣りをして、自分で釣った魚(秋は脂の乗ったアイナメがうまいらしい)で作るわっぱ煮が最高なのだとか。そりゃ最高だろう。

民宿に泊まるにしても、せっかくだから昼飯くらいは自分で捕まえた魚で自炊するのも楽しそうだ。

粟島伝統のお菓子、芋の花もち

続いて紹介するのは、粟島の各家庭で昔から作られていた、「芋の花もち」というお菓子である。芋の花とは、ジャガイモから作ったでんぷんのことだそうで、昔は島特産のジャガイモから芋の花を作っていたそうだ。

今回教えていただいたのは、粟島の料理研究家である民宿みなとやのおかみさん、本保すずさん。ちなみに粟島は本保さんだらけで、私が泊まっていた民宿も本保さんだった。

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作り方を教えていただいた本保すずさん。

まずは島で育てた小豆のアンコを30グラムずつに丸める。

ジャガイモを育てた後の畑で小豆を育てている家が多いそうで、秋に島を訪れると、道のあちこちで小豆を干している光景が見られる。

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島の小豆を使ったアンコ。

そして粟島のジャガイモ(男爵)をたっぷりのお湯で茹でて、柔らかくなったら熱いうちに皮をむいて、よくつぶす。

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これが粟島のジャガイモ。丸っこくておいしそう。

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皮をむいたジャガイモをつぶす。

そこに現代版の「芋の花」である片栗粉と、水飴を入れてよく混ぜる。米と麦が採れない粟島ならではの、ジャガイモを使った生地なのである。

生地の分量は、ジャガイモ1キロ、片栗粉300グラム、水飴大匙2杯を基本に、ジャガイモの水分量などにあわせて調整する。ちなみに砂糖ではなく水飴を使うのは、本保さんのオリジナルなのだとか。

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片栗粉とジャガイモをよく混ぜる。

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水飴を加えて生地に甘さと粘りを出す。

生地に「しなり」が出るまでよく練ったら、用意しておいたあんこ玉をくるくると慣れた手つきで包み込み、笹の葉に包んで蒸し器で10分蒸したら出来上がりだ。

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あんこ玉をくるくるっと包んでいく。

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笹の葉で包むのがかわいい。

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粟島伝統のお菓子、芋の花もち。

作り立てでないとおいしくない特別なおやつ

出来立てアツアツの芋の花もちをいただかせてもらうと、まず笹のいい香りがして、がぶりと噛むと厚みのあるツルツルモチモチした独特の生地がおいしく、中の上品な甘さのアンコと相性抜群。これはすごく好きな味である。

生地の食感が今までに食べたことがない感じで、これは名物料理として島外でもうれそうな気がするのだが、残念ながらこれは作ってすぐに食べないと生地が固くなってしまうため、大量生産やお土産には向かないのだとか。

芋の花もちは、わざわざ作ってもらわないと食べられない、素朴で温かみのある、優しい粟島のおやつなのだ。

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ジャガイモを使った独特な生地も、中のアンコもとってもおいしい!

粟島にいっても芋の花もちはなかなか食べられないけれど、同じように島の小豆を使ったアンコが入った千代華というどら焼きみたいなお菓子は、粟島港前にある勝ちゃんという島唯一のお菓子屋さんで食べることができる。私は島にいる間、5つも食べてしまった。

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前回の記事で日本酒を振舞ってもらったのが、このお店だったりする。

ジャガイモとタコの煮物、イモダコ

最後に紹介するのは、私が粟島までやってきた一番の目的であるタコと、特産品のジャガイモを煮た、イモダコという料理。これは島で食べる機会がなかったので、自分で採ったタコを持ち帰って、自宅で作ってみることにした。

ジャガイモは粟島産ではなく、我が家の畑のものを使用。

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帰りのフェリーから。またねー。

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粟島のタコと我が家のイモで、イモダコを作ってみます。

イモダコの作り方は、芋の花もちを作ってくれた本保さんに聞いておいた。タコとジャガイモを、砂糖、醤油、酒、水で甘じょっぱく煮ればいいらしい。

ススキの咲くころに旬を迎える粟島のタコは、食べてみるとびっくりするくらい味が濃く、とてもおいしいタコだったので、煮てしまうのがちょっともったいない気もした。

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生のタコを塩揉みして、水で洗ってぬめりをとる。

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味をつけるのがもったいないくらいのタコだけれど、砂糖、醤油、お酒、水で煮る。

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この粟島のタコは、ただ茹でただけでも抜群に味が濃い。

鍋の中に出来上がったのは、まさしくジャガイモとタコの煮物、イモダコである。肉がない島での、本土における肉ジャガみたいなものなのだろうか。

あまりなじみのない組み合わせだが、よく考えたらジャガイモとタコというのは、粟島ではもっともポピュラーな食材の組み合わせだ。

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イモダコの完成!

粟島の海を思い出しながら自分で作ったイモダコを食べてみると、タコはとても柔らかく煮えており、そしてタコのうまみを吸ったジャガイモがおいしかった。これが粟島のおふくろの味というやつなのだろうか。

ここに大根やこんにゃくや練り物を入れてもおいしそうだが、それはたぶん「おでん」だ。

島でとれるものが偏っているからこそ生まれた粟島の食文化を、この旅でたっぷりと味わせていただいた。

粟島への旅の目的を、今度は食に重きを置くのであれば、次はやっぱりタイの採れる春がいいかなと、パンフレットを見ながら妄想しているところである。

 

 

 

 

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