富山の野食感謝祭に行きたいな
それは3月のこと。富山で4月14日にざざむしさん主催の『野食感謝祭』というイベントが行われることを知った。ざざむしさん、元気かな。もちろん元気なんだろうけれど、どれくらい元気かな。
富山かー。
いいよねー、ちょうどホタルイカの時期だしねー。
だからこそ、このタイミングでの開催だものねー。
絶対たのしいよねー、ちょうど山菜も採れるしねー。
感謝祭に参加するだけではなく、ちょっと前乗りして食材探しの段階から携われたら最高だよねー。
でも富山は遠いしなー……
とかいって、せっかくのチャンスで迷っていると、気が付けば体が動かなくなる年になっちゃうので(もうすでにいろいろガタがきているのです)、富山在住メンバーや前乗りメンバーに諸々ご相談をさせていただき、会の前日からお邪魔させていただくことにした。
スケジュールは夜行バスで前日(金曜)早朝に富山へと到着し、会を終えた日曜に適当な手段で帰るといういう感じ。そしたら木曜夜中に新宿のバスタで、クーラーボックスをぶら下げた怪魚ハンターの小塚さんとバッタリ会ったり。あー、びっくりした。
新幹線よりは安いからと三列独立シートにしたので、ぐっすり寝られて意外と体力はバッチリ。といっても大した最大HPじゃないですが。
富山のバス停で初対面となった天オジさん(なんで『天オジ』なんだろうと不思議だったが、その謎は後ほど明かされることになる)の車でひろっていただき、ざざむしさん、ペンさん、のんさんとさっそく山菜狩りへと向かう。ここから先はざざむしさんの記事と合わせて読むとおもしろいよ。
「はい、ウェルカムホタルイカ」
は、はい。
車中であいさつ代わりに渡されたのは、昨晩(というか数時間前)に富山湾で捕まえてきたホタルイカを茹でたもの。おお、さすが富山。接岸状況は悪かったものの、どうにかこうして食べる分くらいは捕れたらしい。
そして山菜採りの現場へと向かう道中、正しいホタルイカの茹で加減や、身投げが起きる潮や天気や風向き、甘露煮にするため茹でて目と骨をとるけどついつい食べちゃう罠、ホタルイカもいいんだけど富山はメバルがうまいんだよ、みたいな話がポンポンと出てくるので、ニコニコと後部座席で聞かせていただく。そうそう、私はこういう話が聞きたかったのだ。
ただ残念なのは本日の天候だ。この調子だとホタルイカの身投げはもちろん、姿が見られるかも怪しい感じらしい。ホタルイカの捕れない富山か。オーロラの見られないアラスカ旅行みたいなものになりそうだが、それでも後悔はしていない。
富山の山菜狩りを堪能する
天オジさんの運転でやってきたのは、彼が育った実家近くの山の中。どんな場所に行くのかをざざむしさんに事前確認したところ、「スニーカーでいける場所しかいかないから軽装で大丈夫!」ということだったが、山菜採りなのでもちろんそれなりの斜面だったりする。
あくまでざざむしさんならスニーカーで大丈夫、なんならロンドンブーツでもピンヒールでもOKだぜ!という意味である。よかった、登山靴を履いてきて。基礎体力や突破力に自信がない人ほど、装備はちゃんとした方がいい。ちなみに同行のペンさんはどんな斜面でもクロックスだ。
杉林に生えるコシアブラやタラノメなどを大事に摘みながら、クマの爪痕に驚いたりしつつ先へ先へと進んでいく。
コシアブラ、うまいよねー。まだ葉の開いていない、これぞベストな状態だ。
これはキバナアキギリだったかな。なにかこの草に関する笑い話を聞いたんだけど、覚えてないな。なんだったかな。嫁に食べさせ過ぎたとかかな。記憶力ってどこで売っているんだろう。
タラノメはいつみても心が躍る。
大量のウゴキを発見。新芽の一番美味しい時期だ。ありがたやありがたやと間引きをするようにチョコチョコと摘ませていただく。これでジェノベーゼとか作ったらうまいんじゃないかな。
そのまま川の方まで下っていくと、急に開けた土地に出た。昔は田んぼか畑があったのかな。なんでもここにはデボン紀(古生代の中頃)を髣髴とさせるサイズのコゴミ(クサソテツ)が生えているのだとか。
それにしてもいいところだなー。
ここでキャンプとかしたいなー。
でもクマに襲われるかなー。
この辺はまだ雪が残っているねー。
雪の上を歩くのって楽しい。雪が滅多にふらない場所に住んでいるからこその感想だけどね。
やってきたのは乾燥ワカメみたいな草が立ち枯れている場所だ。これは去年茂っていたシダ植物の仲間。この下からお目当てのコゴミが出てくるのだ。
なるほど、この光景はたしかにデボン紀っぽさあるね。みたことないけど。
「あー。やっぱりまだ早かったかな」
この地面がボコッと盛り上がっている逆さに埋めたパイナップルみたいなやつから、多年草であるコゴミは育ってくるのだが、1~2週間早かったみたい。
山菜採りはタイミングが命。数か月前から決まっていた感謝祭なので、コゴミの成長と合わないのは仕方ないよね。
コゴミ採りたかったですねーとかいっていたら、「日当たりの良い場所に行けば、ここまでデボン紀じゃないけど、いくらでもあると思うよ」ということで、川のそばまで行ってみる。
おーーーーーーーーー!
コゴミ、かっこいい!!!!
充分立派なコゴミだが、さっきのまだ生えていなかったデボンコゴミは、さらに太いんだろうな。富山すげーな。というか案内人の天オジとざざむしさん、さすが。
「このコゴミについている茶色いやつ、これが鰹節だったらなーって毎回思うんだよねー」
確かに鰹節っぽいね。
この頃になると、天オジにさんづけするのをやめた。さんづけにするとなんか『オジサン』よばわりしているみたいだし。というか、あだ名にさん付けするのもね。で、なんで天オジなんだろね。
それにしても天オジがすごくいいんですよ。そのキャラが。富山旅行最大の収穫かもしれないっていうくらいにおもしろい人だった。
コゴミの採り方のコツ(というかルール)は、一つの株から食べ頃のものだけを1~3本(1/3程度まで)だけ採るようにして、しっかりと芽を残すこと。カマでザクッと全部採るような採取は厳禁。コゴミは多年草なので、上手に採れば来年また一回り太くなったコゴミを収穫することができるのだ。
こんな人里離れた場所でも、すでに全部の芽をとられたコゴミの株がいくつかあった。たとえ自分が二度とこない場所だとしても、それは絶対やっちゃダメ。なんていうことを体験を通じて教わっていく。
下の写真、細いコゴミと太いコゴミの差がわかるかな。
ちゃんと健康に保てば、コゴミは年々太くなる。そして全部の芽を刈られたコゴミは枯れていくのだ。
天然ワサビも生えていた。根が食べられるほど育ってはいないけど、葉っぱやつぼみのキリっとした辛味がうまいやつだ。ちょっとだけこの場で味見をさせていただくと、その刺激で目が覚めてくれた。この味のガムが欲しい。
それにしても良い天気だ。
これならホタルイカもいけるんじゃないかなー。
場所をちょっと変えて、桜の下でアミガサタケを探してみたけれどこちらは不発。まだちょっとこっちでは早いかな。でも翌日にザザムシさんの自宅付近で大量発生していたとか。キノコって謎だ。
ドジョウの蒲焼をいただく
山菜狩り後、ちょっと寄り道をして天オジが子供の頃から行きつけだという、創業90年(だったかな)を誇る蒲焼屋の清水屋さんへ。
蒲焼といってもウナギではなくドジョウである。いや正確にいえばウナギもあるけどメインはドジョウ。富山といえば海の幸というイメージだが、この山間地域ではドジョウの蒲焼を食べる文化が昔からあり、5軒あったうちの2軒がまだ営業中。
こういう地元の人と行動しない限りは行きつかない店に、ふらっと連れてっててもらえるのは嬉しいな。こういう店こそデートコースに最適だよねみたいな話が天オジからあった気がする。
清水屋の先代は100歳まで元気だったそうです。ドジョウパワーかな。
どうやって捌くのか、卵のついたドジョウが串に巻かれている。開くのが大変そうだ。
1串100円。こんがりと炭火で焼かれていて、あまじょっぱいタレが最高。ウナギみたいな脂はないけれど、これで日本酒を飲んだらうまいんだろうな。
山菜は買うと安いよね
山菜は我々だけで食べるのならば十分だけど、感謝祭で振る舞うにはちょっと足りない気もする。そこで適当な道の駅に寄ってみたら、笑ってしまうような値段だった。
びっちり入った天麩羅サイズのコシアブラが400円だよ。
こっちの刻んで生のままご飯に混ぜたら最高の新芽なんか300円だ。
当然タラノメもたくさんあった。
「……まあ、採るのが楽しいんだけどね」
これは田舎あるあるなんだけど、地元で消費しきれない最盛期の山菜は、栽培されている遠方からの野菜よりも安くなりがち。この辺を適正な価格でどうにか流通できるといいんだけどね。あまり高くなると乱獲されちゃうという話でもあるけどね。
その後、別の場所でもうちょっと山菜採り。ざざむしさんは会の準備で三日くらいろくに寝ていないらしいので、少しでも家で休むべきなんだけど、せっかく富山まできたのだからと最大限に案内してくれている。ありがたや、ありがたや。ちなみにそれくらい弱った状態で、ようやく山歩きの速度が私と同じになる。
ありがたいので、遠慮せずに楽しませていただく。ありがたや。
コシアブラの木はよく育つので、届かない場所に芽があることも多いけど、絶対に枝を折ったり切ったりしないこと。
「コシアブラとかタラノメを、届かないからって切っちゃうやつがいるんだよ。そしたら、もう来年採れないじゃん。なんでそうまでして採るかなー」
山菜は場所によって成長度合いが全然違って、ここのコシアブラは少し葉が開いているのが多かった。と思ったら、ちょうど食べ頃の芽があったり。謎が多いぞ、コシアブラ。
これはさすがに届かないな。
でも切らない。折らない。ちゃんと諦める。
このように一番先の芽が摘まれているタラノメもパス。
とっていいのは一番芽だけ。写真のピントがずれた。
たまに足元をチェックすれば、極太のワラビがピョローンと伸びている。
もう上を見たらいいのか、下を見たらいいのか、この感謝祭たのしすぎるよ。
ぜんまいも生えていたけれど、アク抜きが大変なので今回はパス。いつかチャレンジしてみたいかな。
いい里山だなー。
ということで、富山の山菜採り、堪能させていただきました!
富山ブラック的なラーメンをいただく
昼食はせっかくだから富山らしいものということで、富山ブラックっぽいラーメン屋へ。純粋な富山ブラックの系列ではないらしいが、それでも十分にブラックだった。
チャーシューメン的なやつを注文。黒いスープに透明な脂の膜。なるほど、これが富山ブラック的なラーメンか。
って数年前に富山ブラック巡りに付き合ったことがあったな。あの頃は自分でラーメンが麺から作れるなんて思っていなかったよ。
@nifty:デイリーポータルZ:とにかく黒いラーメン「富山ブラック」を食べてきた
うん、ちゃんとしょっぱい。がっちり醤油味。
そうそう、こんな味だった。
どうにも白いご飯が欲しくなり、小ライスを追加注文。
やはり富山ブラックには白米が合う。
この塩分濃度をしっかりと舌に記憶させておこう。
きれいな川には水草が生えていた
続いてやってきたのは、田んぼのわきを流れるその辺の小川である。
ただの名もない(あるかな)小川だが、底の様子がちょっと違うのだ。
「保護地区とかじゃなくて、ただの用水路。これはバイカモっていう水草で、ニジマスとかも泳いでいるよ。コンクリートで護岸されちゃったら一瞬で終わるけどね」
水中に防水のカメラを突っ込んでみる。うわぁ。富山すげー。
ここでは何かを捕るのではなく(バイカモはわざわざ食べるほど美味しくないそうだ。食べたのか)、ただ目の前の景色を眺めたり、水の冷たさを感じたりするだけ。それもまたよし。
川沿いをのんびりと散歩しつつ、その辺に生えていたタンポポを摘んで、茎を笛にしてプーップーッと上手に吹くざざむしさん。
真似して吹いてみたけど、白い汁が苦いだけで全然鳴らなかった。
こうして私が死ぬ間際の走馬灯で見る、記憶の中の1ページが溜まっていくのだ。
モンスターキスに寄らせていただく
続いてやってきたのは本日の宿である、株式会社モンスターキスの事務所。世界の怪魚ハンター、小塚拓矢さん率いる釣り具関係の会社だ。本日の宿はこちらで雑魚寝させていただく。
「小塚さん、お久しぶりです!」
「昨日、バスタで会ったでしょ」
そう、会ったんですよね。違うバスだったけど、同じ日に新宿から富山に夜行バスで向かっていたのでした。
採ってきた山菜の下処理をしたり、一緒に夕飯を食べたり。ワチャワチャと合宿みたいで楽しい。
山菜は明日のためにとっておき、地元のスーパーで買ったものや、事務所の冷蔵庫に入っていた魚などを出していただいての晩御飯。もうこれが野食感謝祭っていうことでいいんじゃないかという気がしてきた。
このままビールを飲んでゴロンと雑魚寝といきたいが、本日のメインはこれからなのである。ノンアルコールで晩飯をすませて、ゴロンと横になって夜が更けるのを待つのだが、この場が楽しすぎて、なんだか目を閉じるのがもったいなかった。
↓つづき↓
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