※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2010年3月3日に掲載した記事の転載です。
埼玉県鴻巣市で、「鴻巣びっくりひな祭り」というイベントが毎年おこなわれているらしい。目玉は日本一の高さを誇るピラミッド型ひな壇だという。なんだかよくわからないが、とりあえず見にいってびっくりしてこよう。
鴻巣市役所ロビーにそびえ立つひな壇ピラミッド
ひな壇ピラミッドというのは、最近のバラエティ番組には欠かせないひな壇芸人のヒエラルキーを表した、テレビ局内で使われる秘密の図のことである。はい、こういうボケはいらないですね。
ひな壇ピラミッドというのは、ひな人形を飾るひな壇がピラミッド状になったもの。よくある階段状ではなくて、ピラミッドの形をしているので、四面すべてに人形が置かれているのが特徴らしい。
ひな壇ピラミッドがあるのは鴻巣市役所。
さっそく休日の鴻巣市役所を訪れると、正面入り口の前に立った時点で、奥になにやら巨大な赤いものがみえる。
もし季節が年末だったら、「もうクリスマスのシーズンか」と思う赤さだ。
入口に立つも、ピラミッドの頂点はまだ見えない。予想以上に縦長のピラミッドだ。
そして全体図。写真を縦位置にしないと全部写らない。
なるほど、これは確かにびっくりだ。見上げる首が痛くなるほどに高い。
市役所のロビーいっぱいに作られたこのひな壇ピラミッドは、資料によると29段、高さ6.45メートルもあるらしい。飾られている人形はなんと約1700体。
よく三人官女とか五人囃子とかいうけれど、このピラミッドの場合は、KNJ48(ケーエヌジェー・フォーティーエイト)とか、五人囃子ザイルとか呼びたくなるほどの大所帯である。なんだか漫画に出てくる大金持ちの家にあるひな人形みたいだ。
二階から撮影した頂上。去年よりさらに一段高くしたらしい。もう天井すれすれ。
菱餅もでかいよ。
なんでもそうだと思うけれど、やっぱり数が多いっていうのは単純におもしろい。ここは娘が嫁にいったりして飾ることがなくなったひな人形達の第二の仕事場ということなのだろうが、人形達もまさかこんな形で日の目を見ることになるとは思わなかっただろう。
人形の顔っておもしろい
私は男兄弟で育ったので、ひな人形にまったく縁がなかったのだが、ひな人形ってよく見るとおもしろい顔をしていますね。
「ゴホゴホ、また実験は失敗か...…」
「なんか向かい風がすごくってさー。みてよこの髪型」
「いいかげんにしなさい!」
どの人形もすべて微妙に違っていて、見ていて飽きることがない。勝手に名前をつけながら見ると、それだけでいい脳トレになる。
実行委員会にインタビュー
さてこの巨大なピラミッドとすごい数のひな人形。なにがどうしてこうなったのか、鴻巣びっくりひな祭り実行委員会の方にお話を伺ってみた。
向かって右が話を伺った渡辺さん、左が会長の生川さんとそのお孫さん。
--このイベントはいつから、どういうきっかけで行われているのでしょうか。
2005年からなので、今回で第六回になります。鴻巣の人形作りは380年もの歴史があり、各地の人形を作る職人さんが、鴻巣の人形町というところに修行に来るんですよ。埼玉県でひな人形というと、どうしても岩槻とか越谷が有名ですが、実はそこで作っている職人さんの多くは、鴻巣で修業をした人達なのです。
--そうなんですか!
でも教えている職人さん達はそういう宣伝をあまりしないので、鴻巣と人形が皆さんの中で結びついていないんですね。そこで私達ボランティアが、鴻巣の人形作りの歴史や伝統をこれからの子供達にも伝えていくために、人が一番集まる場所である市役所で、みんなでひな祭りを祝おうと始まったイベントなんです。
--この大量の人形はどうやって用意したのですか。
毎年一月に広報誌やインターネットを通じて募集をしており、鴻巣市だけでなく全国から寄せていただきました。
--人形を集めるのも大変でしょうけど、このピラミッドを作ったり飾り付けをしたりするのも大変でしょうね。
実行委員会の会長である生川さんと、生川工務店の職人さん達が中心になって作っているのですが、これだけの大きさは他ではちょっと難しいと思いますよ。
--階段型ではなく、ピラミッド型だと四面全部ぎっしりですからね。イベントが終わって片付けるのも一苦労ですね。
お祭りが終わると、人形の種類ごとに一つずつ大切に箱詰めしています。でもボランティアスタッフもベテランが多いので、だいぶ作業が早くなりましたね。
--このお祭りは今後も続いていくのでしょうか。
はい、毎年いろいろな形で市民の皆さんにも参加していただけるようなイベントなどを考えているので、来年もまた多くの人に来ていただきたいですね。
ピラミッドだけでもすごい数なのだが、さらに階段にも約300体飾られていたりする。
ひな人形をたくさん集めて巨大なピラミッドをつくるという、思いついてもなかなかやろうとはならないことを、ボランティアの力で成し遂げているのがすごい。しかも日本一である。
おかげで鴻巣が人形の街だということが、しっかりと頭にインプットされました。
人形を真剣に見ている人をみて、もしかしたら自分達が寄贈した人形を探しているのかなと思った。