私的標本:捕まえて食べる

玉置標本によるブログ『私的標本』です。 捕まえて食べたり、お出かけをしたり、やらなくても困らない挑戦などの記録。

春の河原はおいしいノビルが採り放題!

※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2010年4月5日に掲載した記事の転載です。

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ノビルという草をご存じだろうか。私が住んでいるあたりだと、今の時期ならちょっと探せばすぐに見つかる草なのだが、あらためて食べてみると、これがなかなかおいしいのだ。

実家にノビルが生えていた

ある日、駐車場に車を止めて実家に入ろうとしたら、砂利の下から細長いネギのような草が生えていた。

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この草、どっかでみたことがある。

なんとなく見覚えがある草をみていたら、子供の頃に家族でノビル採りをしたことを思い出した。そうそう、ノビルってこういう感じの草だった気がする。

これで根っこが小さなラッキョウみたいに丸くなっていたら完全にノビル。懐かしくなったので、ちょっと掘ってみることにした。

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石が敷かれていて掘りづらいったらありゃしない。

指先を泥だらけにして掘ってみると、でてきたのは記憶と同じ白い球根。うん、完全にノビルだ。

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おー、懐かしい。

春の七草とかだと採るきっかけもあるのだが、ノビルは山菜といえないほどに身近な存在すぎて、もう何年も採ろうとすら思っていなかった。

久しぶりに採ったノビルをすぐに洗って、表面の薄皮を剥いてそのまま齧ったところ、これが鮮烈でうまかった。

子供のころはノビルがそんなに好きじゃなかった気がするが、この年になって食べるとものすごくうまく感じる味なのである。なんだか体がきれいになるような、シャキっとする味。

ノビルを採りに行くことになった

実家に住む母親に、「そこにノビルが生えていたよ」という話をしたら、「ああ、あれは私が撒いたやつの子孫よ」という予想外の回答が返ってきた。なんでも数年前に河原でノビルをたくさん採ってきて、その一部を庭に埋めたものが根付いて、それがちょっとずつ広がっているらしい。やるな母親。

「ノビルが欲しいんだったら、そこよりいい場所があるわよ」ということで、急遽ノビル採りにいくことになった。

やってきたのは家から少し離れたところにある河原。昔、この先で両親が趣味の畑をやっていたので、私もよくついてきて遊んだ場所だ。

なのでノビルとは関係なく、「幼稚園に上がる前、ここで迷子になって大変だったんだから」とかの余計な話をされて恥ずかしい。畑仕事をしている間にいなくなって、さんざん探した後に家で警察に連絡をしていたところにひょっこり私が帰ってきて、「ひとりで帰れたよ!」といい放ったそうだ。私の記憶にはないのだが、自分の子供だったら軽くひっぱたくであろうエピソードだ。

立派なノビルがもりもり生えている

河原は草ぼうぼうで、どれがノビルなのかよくわからなかったのだが、母親に「ほら、これ!」といわれたところを見てみると、なるほどニラやアサツキくらい食べがいのありそうな、立派なノビルが生えていた。

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根元に皮がかかっているのがノビルの特徴。

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太いやつを選んで、シャベルで球根を切らないように掘る。

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土が硬くてシャベルが曲がった。

固い土に少しイライラしながら掘り起こしたノビルは、パチンコ玉よりも大きい立派な球根がついていた。

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素晴らしい。絵にかいたようなノビル。

キノコ狩りは最初全然キノコを見つけられないのだが、慣れてくると「キノコ目」といって、キノコに目が反応してくるようになる。それと同じで、ノビル採りも最初はどれがノビルかわからなかったが、だんだんと「ノビル目」が身についてきて、簡単に見分けられるようになってきた。

大きなノビルが群生している場所をみつけたときのうれしさは、ついつい声を出してしまうほどで、遊びの種類としては潮干狩りに近いかなと思った。海のない県に住んでいる人間としては、こういう遊びが身近にできて、この上なくうれしい。なんでもっと前からやらなかったんだろう。

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これ、ほとんど全部ノビル。夢のような話だ。

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とても簡単に収穫の喜びが得られてうれしい。そしてついつい採りすぎる。

太いノビルを探して、土を掘って、きれいに採る。この流れが楽しすぎて、三人でバケツ一杯採ってしまった。ノビルはまだまだいくらでも生えているのだが、さすがにこれ以上は食べきれないし、処理が面倒なので泣く泣くストップ。

喜んでもらってくれる人が近所にいたら、もっともっとたくさん採りたかったところだ。

下処理がけっこう大変

母と私で一時間ほど採ったノビルは、私一人で二時間かけて下処理をおこなう。なんの罰ゲームだろう。

これがアサリだったら塩水にいれておけば勝手に砂を吐いてくれるが、ノビルは一本ずつ手洗いをして泥を落とし、髭をとって、薄皮を剥いて、葉っぱの先の枯れている部分をちぎらないといけない。

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母親は、実家の裏にこういう小さい玉を撒いたらしい。

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この状態にするのにすごい疲れた。正直、採りすぎたとちょっと後悔した。

ちなみに薄皮は上から剥くと必要以上に剥けてしまうので、下から剥くといい。二時間ノビルと格闘した男からのアドバイスである。

ノビルは葉っぱもうまい

さてノビルの料理というと、生で齧るか、茹でて齧るかしか食べたことがなかったのだが、これだけ量があると齧ったくらいでは全然減らない。そこでノビルをネギやニラだと思い込んで、いろいろな料理をつくってみた。

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まずはチヂミ。プレーンとキムチ入りの二種類。ノビルを生で齧る場合は、あまり球根が大きくないほうが柔らかくておいしいかも。硬かったら軽く茹でて食べればいい。

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大きな球根を選んで天麩羅にしてみた。オカズにはならないけど、ツマミに最適。

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イカと一緒にかき揚げにしてみた。ノビルは球根を食べるイメージが強いけれど、火を通せば葉っぱの部分も全部食べられる。

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潮干狩りでとってきたアサリがあったので、軽く茹でて酢味噌であえてヌタにしてみた。ヌタなんてつくったの何年振りだろ。

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友人に教わったノビルご飯。生のノビルを葉っぱごとみじん切りにして、ご飯の上に鰹節と一緒にたっぷりのせて、醤油をひとまわし。

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いくら食べてもノビルがなかなか減らないので、残りを全部みじん切りにして、豚肉と餃子の具にしてみた。うまいよこれ。

どれも初めて作ったノビル料理だったけれど、生で良し、火を通して良し、ネギともニラとも違う独特の風味が楽しい。採りすぎたかなと思った量だったが、二日できれいに食べきってしまった。

ちょっと探せばどこでも生えているくせにおいしいノビル。でもちょっと下処理が面倒くさいノビル。なんだかこの記事を書いていたらまた食べたくなってきたので、明日また採ってこようと思う。

※ノビルが生えている場所は犬の散歩道である場合が多いので、そのあたりお気をつけください。

 

 

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