私的標本:捕まえて食べる

玉置標本によるブログ『私的標本』です。 捕まえて食べたり、お出かけをしたり、やらなくても困らない挑戦などの記録。

田舎暮らしのインタビュー3:海を眺めながらロボットを作る人

※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2010年5月10日に掲載した記事の転載です。

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いつかは田舎暮らしをしたいと思っているのだが、実際に住んでみたらどうなのだろう。将来の不安を解消するべく、地方に移り住んだ人達の話を聞いてみることにした。第三弾は海を眺めながらロボットを作る人の話。

海を見ながらの仕事に憧れていた石井さんにインタビュー

インタビュー三人目は、「どうも、田舎でロボットをつくっています」という石井さん。彼の仕事はロボットなどのハードウェア、ソフトウェアの開発。

三年前に千葉県いすみ市に移住し、海を見ながらパソコンで作成する日々。中国などで生産をして、ここから発送するというグローバルなビジネスモデルだ。

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田舎暮らしとロボット作りという異色のマリアージュ。

インターネットを使うことで田舎でも仕事ができるのではというのは何度も考えたことがあるけれど、それを実際におこなっている人には初めてお会いする。自分にとって一番リアリティーのある話が聞けるかもしれない。

ロボットを千葉県いすみ市で作る理由

---石井さんはもともと東京に住んでいたんですよね?

「日暮里に住んで、浅草に事務所を借りていたんだけど、仕事がロボットのパーツとかを設計して自分のウェブで販売しているから、場所はどこでもいいんで引っ越そうかなと。一日中設計しているので、ほとんど動かないんですよ。だから都内だと気晴らしができなくて。」

---では、いすみ市に決めた理由はなんでしょう。

「やっぱり土地が安いからですね。海の近くを探していて、うちのかみさんが引っ越すならオシャレなところがいいっていうから北葉山とか探したんだけど、そしたらここと十倍くらい違うの。」

---海の近くといっても人気のエリアだと土地の値段は東京と変わらないかもしれませんね。

「昔ちょっとサーフィンをやっていて、この辺を少し知っていたんで。あと義理の弟がこの近くに住んでいるから。やっぱり一人でも知り合いがいると違いますね。」

---海が見える場所というのはこだわったのですか。

「最初はこだわったんですけど、実際きてみたら、あんまり見ない。リビングにビリヤード台も用意したけど、だいたい洗濯物たたむのに使っていますね。」

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リビングにデーンと置かれたビリーヤード台。確かに洗濯物を畳むのによさそう。

引越しをして子供の喘息が治った!

---家族構成を教えてください。

「今日は実家に帰っているけど、かみさんと四歳の子供が一人。」

---奥さんは引越しに反対しなかったのですか。

「あー、反対しましたね。だいたい女性は反対しますよね。よく別荘をこっちで買って、最初は夫婦で来るけど、そのうち旦那さんしかこなくなる。そういうパターンも多いよね。」

---今はもう納得してこっちに住んでいる感じですか?

「最初は無理やりでしたけどね。今はもう楽しんでいますよ。都会の方だとできない山歩きに近所のおばさんと一緒にいったり、山の蔓でかごを編んだり。子供も東京に住んでいた時はぜんそくがひどくて10回くらい入院していたんだけど、こっちにきたらピタッと治っちゃって。」

---それはよかった!

「やっぱり空気が違うんだろうね。海からの塩で消毒されたのかな。」

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海の近くなので、やっぱり塩害はすごいみたいです。

家を建てたときにこだわったポイント

---この家は新築ですよね。設計するにあたってのこだわりを教えてください。

「地元の女性建築士に頼んで設計してもらったんですよ。個人的には昔の農家みたいな古民家にあこがれていたんですよ。かやぶき屋根の農家でCADっていうミスマッチ。」

---それがこんな葉山みたいなオシャレな家に。

「これはかみさんの趣味ですね。場所は俺の趣味で、家はかみさんの趣味。天井を高くするっていうのがこだわりだったんですけど、やってみたら暖房が効かないんですよ。」

---暖かい空気が上に逃げちゃいますか。でも千葉って温かいイメージがありますけど。

「この辺って夏涼しくて、冬寒いんですよ。房総は冬温暖っていうのはウソですね。それはもっと南の方だけ。」

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このあたりは薪ストーブ保有率が高い。自分が買うなら料理できるタイプが欲しいな。

「もうひとつのこだわりは、外にある居酒屋風の掘りごたつ型デッキ。ここでいつでも飲めるのいいでしょ。いまここにキウイを植えていて、自然の葉っぱを屋根のかわりに這わせようかなと。」

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私もこういうところで毎日ビール飲みたい。

田舎で仕事をする方法

---すごい景色のいい仕事場ですね。でもパソコンが塩害で死にませんか?

「もう窓は開けないですね。完全エアコン室。海を見ながら仕事をしようとしてこの配置にしたんですけど、眩しくてモニタが見えないですね。だいたい僕がやっているのCADなんで、これだと全然見えない。だからいつもブラインドを締めているんです。これは盲点でしたね。」

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仕事場の景色が素晴らしかった。写真だとわかりにくいれど、外房の海が見える。

---それは切ない。こっちにきて仕事がしづらくなったところとかありますか。

「あー、仕事ではないですね。困るのは東京の友達から飲みいこうっていわれることだけ。」

---こういう仕事だったら、インターネットがあれば大抵対応できますか。

「そうですね。ロボットの基盤の量産とかも、CADのデータを直で中国に送っているから。そこの事務所はカナダなんだけど、そこに英語で頼んで。」

---すごい国際的ですね。技術力とインターネット上での行動力があれば、こっちにきても仕事は困らないものなんですね。

田舎での生活について

---こっちにきて生活費は変わりましたか。

「金は浮きますね。今はここが自宅兼事務所なんですけど、向こうにいたときは、事務所代が安いところで10万と、住むところが普通の賃貸マンションで14万。毎月24万が人に払っているだけだから、ふと考えたらもったいないなって。こっちきてこの家を建てて何千万かのローンを組んだんだけど、それでも東京の家賃より安いから。賃貸と違って家が手元に残るし。」

---そう考えると全然違いますね。私の場合、将来の仕事が漠然と不安でローンを組む勇気がないのですが。食費もだいぶ安くなりますか?

「食費はね、こっちにきて増えましたね。刺身ばっかり食っているから。せっかくだから夜釣りとかしたいだけど、夕方から仕事が絶好調になってくるタイプだからなー。東京に住む仲間は、ここを別荘みたいに使っていますよ。かみさんの友人も毎週のように癒されにきたりね。」

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薪割りをする生活っていいなと単純に思うのは、まだ自分が住んでいないからかな。

インタビューを終えて思ったこと

インターネットさえあれば、職種によっては田舎にいっても東京と変わらずに仕事ができるということが分かった。ただ問題は、インターネットとなにを組み合わせるかである。石井さんはロボットの開発と販売をインターネットと組み合わせることで、見事に田舎暮らしを成立させている。私だったら何ができるだろう。

子供の喘息が治ったという話しを聞けたのもよかった。今のところうちの子供は元気だが、やっぱり空気のいいところで育てたいという思いがある。なんて子供を理由に田舎暮らしを進めようとしているだけだけど。

いままでは漠然と田舎で暮らしたいなと思っていたが、具体的に「田舎でなにをしたいのか」、そして「田舎でなにをするか」を考えるいいきっかけになった。まだその答えはでていないけれど。

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「ロボットにぬいぐるみを着せて動かそうと思っているんです。」

■石井さんの会社:浅草ギ研

今回は千葉県いすみ市の海のそばを選んだ三人の話を聞いたが、また別の理由で別の土地に移り住んだ人の話を聞いてみたいと思う。

 

 

 

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