※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2012年6月6日に掲載した記事の転載です。
レモンや柚子などの柑橘類の皮とスピリタスで作る、チェッロというリキュール作りに挑戦してみた。
柑橘類の皮でつくるリキュール、チェッロ
「ヨネごはん」というブログをやっている友人、ヨネタニさん作の柚子の皮で作ったチェッロというお酒をいただいた。これが飲んだ瞬間、口いっぱいに柚子の香りが広がる、今まで味わったことのない衝撃的なお酒だった。
もともとはレモンの皮を使って作られる、イタリアの『リモンチェッロ』というお酒がオリジナルなのだが、せっかく自分で作るなら市販されていないものをということで、柚子の皮を使ったそうだ。果実酒ならぬ果皮酒とでもいうべきか。語呂が悪い。素直にリキュールでいいですね。
これは自分でも作ってみたい。柚子チェッロの作り方は、ヨネタニさんが師匠に教わったというレシピが載っているということなので(こちら)、私もマネして挑戦してみることにした。
使用する柑橘類は、できれば無農薬栽培で、なおかつ収穫後にワックスや薬が掛かっていないものがいい。私は知り合いの家からもらってきた夏ミカンが大量にあるので、それを使うことにした。
釣ったアジと交換してきた夏ミカンを使用。
この夏ミカンは、そのまま食べるには相当酸っぱいが、これでマーマレードを作ると、とてもおいしいのだ。とかいいつつも、作るのが面倒で手つかずのままだったので、腐らせる前に役に立つ日が来てくれてうれしい。
スピリタスと果糖を使う
梅酒などの果実酒は、35度くらいのホワイトリカーと氷砂糖で数か月漬けるだが、チェッロは高アルコール度数のホワイトスピリッツと砂糖で、1週間~1ヵ月漬けるのが一般的らしい。
今回のレシピでは、スピリタスと果糖(砂糖ではない)を使い、漬けるのはたった一日。
偶然にも、カラーリングが合っていますね。
スピリタスとは、ポーランドが誇る最強のウォッカ。その度数はなんと96度。これが角度だったらまさかの直角越えである。
お酒というよりは、ほぼ純粋なアルコール。そのまま飲むと、唇、口内、喉、食道、胃と、触れたところのすべてが熱くなるという酒だ。
消毒や火を吹くためといった使い道は聞いたことがあるけれど、飲むためにこれを使うというのは初めて聞いたかもしれない。
高いアルコール度数のお酒で、一気に柑橘類の皮の成分を抽出するのが、チェッロ作りのコツらしい。
アルコールは水より比重が軽いので、瓶を持つと軽くて驚く。
果糖というのは、ジュースなどの成分表でみたことがあるような気がするが、単体としては初めて目にする材料だ。
砂糖に比べて甘さがスッキリしているため、果糖を使うことで、できあがったチェッロもスッキリとした甘さになるらしい。ちょっと舐めてみると、確かに強烈に甘いのだが、しつこさのない甘さがする。
果糖の入っている袋に書いてある説明書きによると、常温以下で砂糖よりも約1.5倍も甘いため、チェッロに使う量も少なくてすむ。結果として、アルコール度数の高いチェッロが出来上がる。私はアルコールに強くないので、度数は高くなくてもいいのだが、やはり度数の高いお酒というのは、どこかロマンを感じる部分があるかな。
普通のスーパーではなかなか売っておらず、冨澤商店で買いました。
柑橘類の皮を薄く剥く
チェッロを作るには、まず柑橘類(私は夏ミカン)をよく洗い、水気を拭き取って、皮のオレンジの部分だけを薄く剥いていく。
使う量はお好みだが、夏ミカンならいっぱいあるので、たっぷりと8個分使ってみることにした。
皮の白いところが入ると苦くなってしまうそうなので、どれだけ薄く剥けるかが味の決め手になりそうだ。
汁が飛んで目に入ると、とっても痛いよ。
皮を薄く剥くコツは、よく切れる包丁を使うこと。私は刃の薄いぺティナイフを使い、夏ミカンを2つ剥くごとに、切れ味が鈍ってきた刃を砥ぎ直した。
白い部分が見えないくらい薄く剥くのがコツらしい。
チェッロ作りでは、明らかにこれが一番大変なのだが、こういう作業はわりと得意分野なので、8個分を1時間も掛からずに終わらせた。
うん、実に楽しい。
こういう仕事があったら、週一くらいでバイトしたいくらいだ。
夏ミカン8個分を1時間で剥いたよ。誰か褒めてください。
漬けるのは一日だけ
剥いた皮を適当な瓶に詰め、そこにスピリタスを1瓶注ぎ込む。漬けるのはたったの1日。たくさんの皮を使っての短時間での抽出。料亭で使うカツオダシのような、なかなか贅沢な作り方である。
普通のレシピより、かなり皮の量が多いかも。
残った果実で、生搾りチューハイでいただいたり、ポン酢を作ったり。
果糖のシロップと合わせる
翌日、瓶の蓋を開けると、夏ミカンの爽やかな香りに混じって、注射をする際のアルコール消毒のような匂いがした。全体的に青春っぽい。このまま香水にしたら、つけている人を惚れてしまうかもしれない。
これをちょっと舐めてみたら、舌がピリピリして飲めたもんじゃなかった。そう、まだ完成ではないのだ。
むせかえるような夏ミカンとアルコールの香り。
このスピリタスをを甘いシロップで割るのだが、レシピによると、使う果糖は320~350グラムと書かれている。普通の砂糖よりも1.5倍も甘く感じる果糖なのに。
とりあえずレシピの下限である320グラムにしておいた。
驚きの量の果糖にスピリタスと同量の水(500ml)を加え、煮溶かしてから冷まし、砂糖水ならぬ果糖水のシロップを作っておく。
このシロップに夏ミカンの皮のエキスを抽出させたスピリタスを加えると、なんと一気に白濁して、夜中に一人で大興奮。カルピスオレンジみたいな色に大変身してしまった。
一気に白濁して、失敗かと焦る。
これで大丈夫なのか気になったので、恐る恐るヨネタニさんに聞いてみたところ、白濁しても問題ないそうだ。スピリタスに溶けていた皮の油分が、シロップで割られてアルコール度数が薄くなったために、溶けきれなくなってどうのこうのという理由らしい。それだけ夏ミカンのエキスが濃いということなのだろう。
そういわれてみると、前に飲ませていただいた柚子チェッロも、こんな色だったような気がしてきた。
あとはこれを瓶に詰めて、一晩冷凍庫でキンキンに冷やせば完成。ここまでトータルわずか3日である。
紛らわしい瓶に入れてみた。それにしてもすごい色。
「黄色い悪魔」がやってきた
こいつの飲み方は、冷凍庫でトロリとするくらい冷やしたところを、同じく冷やした小さなグラスに注いで、ストレートでキュっといくのがおすすめらしい。ちなみにアルコール度数が高いので、冷凍庫に入れても凍ることはない。
その通りにやってみると、ウイスキーと同じくらい度数が高いはずなのに、果糖のスッキリとした甘さと柑橘系の香りのおかげで、恐ろしいほどに飲みやすい。まさに大人のカルピスオレンジ。これは危ない。絶対に危ない。
夏ミカンの皮を使ったので、ちょっと苦味が強いかな。もう少し甘さがあってもよかったか。でも十分おいしい。やっぱり危ない。
冷たければ冷たいほどおいしい。
危ないとは思いつつも、あまりにおいしいので調子に乗って3杯飲んだら、速攻で酔いが回ってダウンしてしまった。さすがは元スピリタス。
こいつのかわいい見た目と飲みやすい味に騙されてはいけない。久しぶりに二日酔いを味わってしまった。自分で作っておいてあれだが、このお酒を「黄色い悪魔」と呼ぶことにした。チェッロ、恐るべし。
ストレートで飲むチェッロはとてもおいしいけど、私には危険すぎるので、炭酸や水で割って、グラスの縁に塩を付けたスノースタイルで軟弱に楽しんでいる。
塩っ気が甘いチェッロと合うんですよ。
夏になったら、かき氷に掛けて食べようと思う。食べすぎると、いろいろな角度から頭が痛くなりそうだけどね。
そして後日に友人達と品評会した記事がコチラ。