※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2014年5月13日に掲載した記事の転載です。
江戸川の河口から船で潮干狩りにいき、江戸前のアサリをとってきた。東京湾の底力、すごい!
船で行く潮干狩りという名の冒険旅行
初夏の海レジャーといえば、縄文人も大好きな歴史と伝統の潮干狩りである。この時期に大潮の干潮を狙って干潟にいけば、どこでもアサリがウハウハなのだ。わはははは。
……というのは何十年も前の話で、干潟の埋め立てが進んだ東京湾では、天然のアサリが獲れるようなイカした干潟はなかなかなく(なくはないですが)、どこかから運んできたアサリを撒いている有料の潮干狩り場がほとんどとなっている。
とはいえ、東京湾にアサリがまったくいなくなったのかというとそんなことはなく、徒歩ではアクセスできないような場所にある沖の干潟には、アサリがザクザクと眠っているらしいのである。
ということで、普段は魚釣りでお世話になっている伊藤遊船さんという船宿にいってきた。江戸川放水路河口に位置するこのあたりの船宿は、初夏の大潮まわりの日限定で、潮干狩り用の渡し船を出しているところがあるのだ。ここなら渋滞に巻き込まれることもなく、駐車場待ちをする必要もない。
大潮の干潮時にだけ現れる幻の島へ船で渡って、宝物(アサリ)を探しに行くのである。これぞ冒険心を満たしてくれるレジャーではないだろうか。
ということで、船宿にやってきました。
干潮が一番引く潮の二時間くらい前に、船で出発します。
島ではなくて川岸だった
船が出発してほんの数分、やってきたのは川岸に現れた小さな干潟。沖に現れた砂の島に行くものだと勝手に思っていたら、ちょっとイメージと違った。
船宿から陸続きの場所ではあるが、確かに船でしか行けない場所である。しかし、こんな場所で本当にアサリは獲れるのだろうか。
「え、ここ?」
潮干狩りっぽくない干潟ですね。
この干潟は海水浴場のような砂地ではなく、アサリやカキの殻と、真っ黒い泥が堆積してできている。普段は海底に眠っており、大潮の干潮時にだけ海面から現れる場所である。たぶん。
こんなところにアサリは本当にいるのかなと思いながら、年季の入った熊手を入れると、ゴロンゴロンとアサリが出てきて驚いた。
なんだ、この高密度アサリ密集地帯は。
生きている貝なんていなそうな場所なんだけれど、ところがどっこいアサリを漁り(あさり)放題。
ゴロゴロと出てくるアサリちゃん。
河口というのは川から流れてくる水によって栄養豊富な場所であり、たくさんの川が集まる東京湾の魚介類は昔から珍重されてきた訳だが、これが東京湾の底力なのかと驚いてしまうアサリの埋蔵量である。東京湾海底だけに底力。
おそらくこの干潟の沖側に絨毯のようにびっしりと居ついているカキの浄化作用やらミネラル成分やらが、このアサリ達を養っているのだろう。年に数日しか人が来られない秘境ということもあり、アサリは年末のアメ横みたいな密度で生息しているようだ(ちょっと言い過ぎた)。
アサリ以外にも、ホンビノスというアメリカ原産の外来種もゴロゴロと転がっている。これは青潮(海の酸欠)に強いといわれおり、東京湾で増殖している貝である。
このホンビノスはアメリカだとクラムチャウダーなどに使われているらしく、大きい上に味が良いため、東京湾の新しい海産物として扱われている帰化生物。憧れのハマグリのような可憐さこそないけれど、その厚い殻には外国人力士のような力強さを感じる。
左がホンビノスで、右がアサリ。
ちょっと掘れば、アサリもホンビノスもいくらでも出てくるので、すぐに数日分のおかずを確保することに成功。
数十年前なら、こんな干潟が徒歩でいける場所にもたくさんあったのかな。
大粒のものだけを選んで食べる分だけお持ち帰り。
ホンビノスも持って帰らせていただく。
せっかくなので自然観察も楽しもう
来年以降もこの場所で潮干狩りを楽しむためにも、これ以上持って帰るのはやめておこうということで、ここから先は熊手を手放しての牡蠣殻海岸(仮名)冒険タイム。
ここはアサリやホンビノス以外の生き物の気配も濃く、自然観察をするだけでも十分面白い場所だった。
上陸後に潮が引いて現れた干潟は、なんと全部カキ。
しかも身が入った生きたカキである。これぞ天然のオイスターバー!(食あたりの可能性があるので食べないけど)
河口側へと歩いていくと、カキの上からアオサという海藻がぎっしり茂っていた。
よく見ると、イガイという黒い二枚貝もたくさんあった。こりゃ意外。
護岸にびっしりとついている貝を見るのも楽しい。
お、以前触手が目に入って文字通りひどい目にあった因縁のアカクラゲだ。
アオサに交じって、まだノリも生えていますね。
この写真内だけで何匹もいる仮面ライダーアマゾンっぽいイソギンチャク。
ええと、なんだこれ。
うれしい拾い物、アカニシというサザエみたいな味の貝。本日のラッキー魚介類。
これはオオノガイの貝殻かな。これも東京湾に住む干潟の生き物。
バサバサバサっと音がして、何かと思ったらすごい量の鳥だった。
ここで滑って転びそうになった。海は危険がいっぱいなので気を付けましょう。
おいしくいただきました
持ち帰ったアサリとホンビノスは、しっかりと砂抜きをして翌日にいただいたのだが、栄養豊富な干潟で育った貝達だけあって、身がふっくらとしていて、とても旨みが濃く、最高においしかった。身もダシも最高にうまい。
住宅地からすぐ近くという場所柄、もしかしたら泥臭いのではとも思ったのだが、そんなことは一切なし。東京湾、すごい。さすが江戸前の幸である。
プクプクとしたアサリがうまい。
ホンビノスは本場にならってクラムチャウダー(というかホワイトシチュー)に。
埋め立てによって年々減っていく干潟は、埋め立てと乱獲さえしなければ、いつまででもたくさんのうまいアサリを生み出してくれる場所なんだなと実感。
年に一度だけ、またここのアサリを掘りに来たいと思う。
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