私的標本:捕まえて食べる

玉置標本によるブログです。 捕まえて食べたり、お出かけをしたり、やらなくても困らない挑戦などの記録。

七面鳥の丸焼きという冒険に挑む

※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2013年11月13日に掲載した記事の転載です。

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ロマンと野趣にあふれる料理、それは丸焼き。今回は念願だった七面鳥の丸焼きに挑戦してみたのだが、これがとてもおもしろかった。

七面鳥を丸焼きにしてみたい

七面鳥の丸焼きというと、日本ではクリスマスのご馳走というイメージがあるけれど(実際に食べるのはほとんど鶏だが)、アメリカでは感謝祭という11月の第4木曜日の祝日に食べられることが多いそうだ。

ターキー、ターキー、ぼくタマキー(本当はタマオキ)。

そんな私は、特に歴史的、宗教的な理由はなにもなく、ただ単純に自分で七面鳥を丸焼きにしてみたいという好奇心からの挑戦である。

七面鳥の丸焼きは、料理というよりも挑戦、そして冒険といってもいいだろう。ちなみに鶏の丸焼きすら作ったことがない男だ。いろいろすっ飛ばしていきなりの七面鳥チャレンジである。

さて七面鳥の購入先は、以前に生ハム原木を1本買ったことがあるグルメミートワールドのネット通販で買うことにしたのだが、問題はその大きさである。

我が家にあるオーブンレンジの焼くスペースは、幅が34センチ、高さが20センチという、ごく普通の家庭用サイズなので、あまり大きなものは入らない。適当に買うとたぶんオーブンからはみ出る。

グルメミートワールドには1.8キロの小型サイズから10キロ近い大物まで揃っているので、購入前に一度メールで相談をして、サイズを伝えてギリギリ入るであると思われる約4キロのものを購入。これで6~8人のパーティー用サイズらしい。

値段は100グラムあたり100円程度なので、予想していたほど高いものではなかった。

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冷凍でドーンと到着。

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さすが4キロ。ギャートルズサイズに肉の固まりである。

七面鳥の丸焼きの方法など当然知らないのだが、商品にオリジナルの説明書がついていたので、これを読みながら進めれば間違いはなさそうだ。

ざっと読んだところ、時間はたっぷりかかりそうだけれど、この前買った家具の組み立てよりは簡単っぽい。

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丁寧なマニュアル付き。

まずは解凍をする

七面鳥の丸焼きを作るにあたって、まず最初にするのが解凍作業である。パソコンのデータだったらダブルクリックで一発なのだが、七面鳥の場合は同封のビニール袋に入れて、氷水に漬けて解凍すると書かれている。この方法だと冷蔵庫に入れて解凍するよりも短時間なので、肉の細胞組織に負担が掛からず、ドリップ(解凍時に出る汁)を少なくすることができるとのこと。マグロの解凍などでも最近使われている方法だ。

しかしここで問題発生。発泡スチロールに氷水を入れて、そこに浸らせると書いてあるが、そんな4キロの七面鳥が入るような巨大な発泡スチロールなんて持っていないって。

さてどうしたものかとしばらく頭を捻らせていたのだが、よく考えたら我が家にはクーラーボックスが何個もあった。16リットルサイズがジャストフィットだ。

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あってよかった、クーラーボックス。

解凍の時間は肉1キロに対して10時間。4キロなので氷を何度も足しながらの40時間の長丁場だ。

と、説明書の内容を勘違いしてしまったのだが、これは冷蔵庫で解凍をした場合の話で、本当は氷水なら1キロあたり3~4時間で、4キロなら12~16時間でよかったらしい。おかげでドリップがちょっと出てしまった。

本来は解凍後、肉を休ませるために半日から1日冷蔵庫で休ませるとあるが、解凍時間が無駄に長くなってしまったので、これはカットした。

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少しドリップが出てしまったが、それでも十分美味しそう。

七面鳥の中からネックと砂肝とレバーを発見!

必要以上に時間を掛けて解凍してしまった七面鳥の封印(脚を止めているプラスチック)を解いて中を確認すると、そこからネック(首の部分)と、レバーと砂肝が出てきた。これは鶏肉の内臓好きにはたまらないサプライズだ。

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内臓を捨てないで、入れておいてくれるのがうれしい。

七面鳥の本体を丸焼きにする前に、まずはこちらをフライパンで焼いていただいたのだが、これが実にうまかった。どれもサイズが大きいので食べごたえがあり、野趣あふれる深い味わいがする。なるほど、確かに鶏とはちょっと違う。家畜なんだろうけれど、しっかりと野生っぽさが残る味。豚肉に対するイノシシのようなワイルドさが感じられる。

これを食べられただけでも、丸焼きにチャレンジした甲斐はあったと思う。丸焼きをしなければなかなか手に入れられない部位だ。

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ネック、レバー、砂肝の豪華三点盛り。ネックも肉がたっぷりついている。これらだけ買えないものだろうか。

七面鳥の下ごしらえをする

さて話は本筋に戻って、続いては七面鳥の下ごしらえ。七面鳥を中までよく水洗いをしてから水分を拭きとり、塩、胡椒を全体によく揉みこむ。せっかくなので、家にあった適当なスパイスもジャンジャンバリバリと揉みこむ。ちょっとスパイシーなくらいに仕上げてみたい。

さすがは七面鳥、肌(皮)がムチムチしていて全体にハリがあり、なかなか揉みがいのあるボディだ。

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きみ、なかなかいい体しているね。

それを適当な香味野菜(ニンジン、セロリ、長ネギを使用)と一緒にビニール袋へ入れて密閉し(この作業をマリネというらしい)、また2日間冷蔵庫へ。

わかってはいたのだけれど、なかなか時間のかかる料理である。

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まだまだ食べられません。

解凍した七面鳥はそれなりに物理的な融通が利くので、4キロサイズなら無理に押し込めばどうにか我が家の冷蔵庫にも入ってくれる。

これから焼くまでの間、冷蔵庫を開けるたびに、「おお、七面鳥が一羽入っている!」と、感動する日々が送れるのである。

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ギリギリセーフのサイズ。

七面鳥を丸焼きにする

さてようやく、お待ちかねの丸焼きにする工程までたどり着いた。しかし、冷蔵庫から取り出してすぐに焼くのではなく、2~3時間室温に戻しておかないと、中の部分がうまく焼けない。ここでまた待たされる訳である。

オーブンのトレーにクッキングシートを敷き、室温になった七面鳥をどんと置く。七面鳥の中になにかを詰めて焼くといいらしいが、特に思いつかなかったので、もったいないのでマリネしていた野菜を詰め込んでみた。今考えると、バターライスでも詰めておけば肉汁を吸った最高の炭水化物が食べられたのにと悔やまれる。

そしてタコ糸で両足を縛り、サンオイル気分で全体にオイルを塗り、胸の一番肉が厚い部分に付属のポップアップタイマーという謎のピンを差し込む。どういう仕組みなのかは謎なのだが、七面鳥が焼き上がると、これがピョコンと飛び出てくるらしい。

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シリコンの刷毛が塗りやすいです。

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これが噂のポップアップタイマー。

七面鳥を焼くには、予熱なしの低温調理が基本とのことで、オーブンに肉の塊をセットしてから、120~130度でじっくりと焼きあげる。目安は1キロあたり1時間。

このオーブンレンジを購入してからだいぶ経つが、電子レンジではなくオーブンの機能を使用するのは、もしかしたら初めての経験かもしれない。

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ギリギリ入った!

一気に焼き上げずに、表面が乾いたところで再度オイルを塗りこみ、長州力のように完璧な小麦色の鳥肌を目指す。

この時点で、七面鳥から漂う香り、いや匂いがもうたまらない。

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早くかぶりつきたい。

七面鳥が焼き上がった!

焼き始めてから約4時間、そして冷凍の七面鳥が届いてから4日の月日が経ち、ようやくポップアップタイマーがピョコンと飛び出し、俺の七面鳥が見事に焼き上がった。

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ピョコン。

料理はなんでも出来立てが一番おいしいものだと思っていたが、七面鳥の丸焼きはその肉汁を閉じ込めるために、オーブンから取り出してアルミホイルで包んで、肉の中に汁が落ち着くのを待たなくてはならないそうだ。

ここにきて、まだ待たされるのである。恐るべし、七面鳥の丸焼き。堪忍袋の緒がやばいぜ。

この時、私はホイルに包んだ七面鳥を、電気の切れたオーブンに入れておいたのだが、後で販売元に確認したら、それだと予熱で焼けすぎてしまうことがあるので、オーブンの外に出して待つのが正解だった。

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全体をアルミホイルで包んで待つ!でも待てない!

まだかまだかとモヤモヤしながら雑誌などを読んで時間をつぶし、もういいだろうと一時間後に御開帳。

このサイズの丸焼きが乗るような皿は我が家にはないので、オーブンのプレートに乗せたまま食卓へ。

どうだろう、見た目はほぼ完璧といってもいいのではないだろうか。

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これぞ私が求めていた七面鳥の丸焼き。スケール感が伝わらないけど。

ちゃんと火が中まで通っているのかを確認するために、手羽元部分に逆関節を決めると、中からしっとりといい具合に焼かれた、ほんのりピンク(でも火はちゃんと通っている)の肉が出てきた。これは成功だろう。

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ちゃんと焼けているっぽい!

バクバクと心臓を高鳴らせながらポップアップタイマーを抜き、タコ糸を外して、キッチンバサミでチョキチョキと解体。この作業のやり方も、説明書にちゃんと載っていたので、特に問題はなかった。

肉を外していくたびに、うまそうな断面がコンニチワ。

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両腕、両脚、両胸、背骨の7つに分解。

どの部位もそれぞれうまい!

七面鳥を食べるためのソースだが、今回はそこまで頭が回らなかったので、プレートに溜まっている溢れ出た肉汁に醤油を垂らし、それをソースとして食べることにした。濃い目にスパイスを揉みこんであるので、きっとこれだけで十分うまいはず。

まずは一番うまそうなモモ肉からいただいたのだが、噛むと程よい弾力があり、それでいてジューシー。七面鳥独特の野趣あふれる旨味が楽しい。そしてうれしい食べごたえ十分のボリューム感。

パリフニャという感じに焼き上がった皮のおいしさといったら、もう、ほら、あれだ。うん、言葉がみつからない。

夢中になってどんどん食べ進めていくと、部位ごとに変わっていくその味の違いに、なんだかフルコースを食べているような充実感を覚えた。

ターキーだけにストライク連発という感じだ(ボーリングギャグ)。

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ソースはこの肉汁+醤油。

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決して大味ではないモモ肉。

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名古屋人が狂喜乱舞しそうな巨大手羽先。皮と脂の旨味が一番強い部位だ。

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脂の少ない胸肉は、しっとりを保ちつつあっさりした味。ちょっと予熱で火が通りすぎたかも。

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これに合わせるお酒はワイルドターキー。

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背骨と肋骨の周りの肉も、味が濃くてうまいのだ。

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鶏と七面鳥の手羽元の大きさ比べ。豪快にから揚げにしても楽しそう。

どの部位もおいしかったのだが、個人的に一番を上げるとすれば、ボンジリと呼ばれる部分だろう。今までボンジリというのがどこなのかよくわかっていなかったのだが、どうやらお尻の先にある突起部分のようだ。

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この亀の頭みたいな場所がボンジリ。

脂と皮を愛する者にとって、これだけは誰にも食べさせたくない、独り占めしたくなる味だった。でもこの美味しさを分かち合いたい。知ってほしい。ああ、この矛盾する心の葛藤。

脂(というよりはコラーゲンだろうか)の固まりなのに、これが全然しつこくなく、思い出しただけでチューハイが三杯は飲める味。鶏のボンジリなら焼き鳥屋で食べたことがあるけれど、七面鳥のボンジリは、また格別の美味しさだった。一羽から一口分しかとれないのが悔しい。

このうっかりすると食べずに捨ててしまいそうな七面鳥のボンジリの味を知っているのは、きっと世界に何人もいないだろうと、よくわからない優越感に浸ってしまった。

七面鳥はいいダシがとれる

ここまでで充分もとはとった感があるのだが、食べ終わったらそれでおしまいではないのが、七面鳥の丸焼きだ。

なんでも七面鳥の骨はとてもいいダシが出るということなので、これでスープを作ってみることにした。

上品に澄んだダシではなく、ちょっと濁ったくらいのコクのあるダシをとりたかったので、圧力釜に適当な野菜と水を加えて、ガンガンと煮込む。

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とびきり贅沢なスープができそうだ。

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うん、濃いね。

このダシを濾して、適当な味付けをして完成させたのが、七面鳥ラーメンである。チャーシューの代わりにほぐした胸肉をトッピングしてみた。

食べてみると、スープの強烈なうまさに、市販の麺がぜんぜん釣り合ってくれない。麺を手作りすればよかったと激しく後悔。

もちろん十分に美味しいのだが。

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ちょっと冷めると、すぐにコラーゲンが固まりだすスープの濃さ。

七面鳥のダシ汁はまだ残っていたので、翌日はこれをカツオと昆布の和風ダシで割って、そこにカレー粉を加えて、カレー南蛮風の蕎麦にしてみた。

和風なんだか洋風なんだかインド風なんだかよくわからないスープだが、これもいける。クリスマスに七面鳥の丸焼きをいただいて、年末にその骨でとったスープの年越しそばなんてどうだろうかと、ついつい計画を立ててしまいそうになる味だ。

ただネギは生のものを乗せるのではなく、スープで煮て火を通すのが正解だったと反省。

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これもまたうまい。

ということで、初めての七面鳥の丸焼き、これでもかと堪能させていただいた。

舌と胃袋だけではなく、冒険心、好奇心、探究心といった心を満足させてくれる、手間と時間を掛けるだけの価値がある料理だと思う。

ただ解凍や仕上げのところでいくつか反省点もあるし、詰め物もぜひやってみたいので、なにかの記念日にでも、また再挑戦したいと思う。

 

 

 

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