先日、「みんなのごはん」で取材させていただいた池袋の上海料理店「大沪邨(だうつん)」。どの料理も美味しく、またMさんの話がおもしろかった。
しかし、である。あの時はまだ名物である上海蟹が旬の手前というタイミングだったのだ。餅と蟹の炒め物はうまかったけど。
そこで上海料理を語るには上海蟹をちゃんと食べなければダメだろうということで、改めて盛期を迎えたタイミングでいってきた。いやもう記事は公開されているからいいんだけど、ほら後学のためにね。
料理はもちろんMさんによるスペシャルセレクションのコース。
問題は上海蟹が小さいながらも高い蟹であること。一杯150gで2500円もするらしい。二杯食べたら蟹代だけで5000円だ。わぉ。
いま上海蟹の季節ですね🦀蟹肥て美味しいですね🤤
— 大沪邨(だうつん)老板 (@dahucun20140415) November 3, 2020
去年は30人上海蟹パーティーしただけど、今年は知らない人同士パーティー難しいだよね😔残念😢
ても蟹は食べたい🦀美味しいもの食べたい🦀の人は1はい2500円/150g(重さに値段変ます)
予約は電話でお願いします☎️0369070767
要予約料理の相談も🆗 pic.twitter.com/H5BDoNSWf1
Mさんがお店と相談して「これでも十分楽しめるベーシックプラン」と「妥協なしのデラックスプラン」を提案していただき、参加者が全員一致で「せっかくなので!」とデラックスを選んだため、一回の食事としては人生で一番高いんじゃないかという金額となったのだが(ほら高い店にいかないから)、先に結論を言うとすごくよかったんですよ。
ということで、入店して手を洗おうとしたら、前回は隠れていたルーシーがいた。
しかも大人しく同行者達に撫でられている。ご機嫌だ。
今日なら私も撫でられるだろうか。
あ、逃げた。
つれないなあ。
と思ったらサービス満点!
ありがとう、ルーシー。
最初は上海料理の代表的なメニューである、豚スペアリブの甘辛酸っぱ煮的なもの。
すごくはっきりとした味付けで好みの味。骨の周りの肉を剥がして食べるのが楽しい。現在のシェフ(上海から100キロちょっと北西の揚州出身)が上海オリジナルの味付けに近づけるため、何度も甘さや酸っぱさを調整したそうだ。
丸のままじっくりと煮込むという塩水鴨。
一見すると普通の料理っぽいけれど、これがすっごくうまい。なんだこれ!っていうレベルで。あー、びっくりした。
豚のタン。これも落ち着いた見た目に対して、どうしたんだろうといううまさ。味が濃くてうまい。基本のレベルがすごく高い。
肉が続いたところで、ダイコンとクラゲ。
食感が違う組み合わせが素晴らしい。
さすがデラックス、ここまで全部おいしい。またこよう。
そろそろカニかなと思わせて、小エビの唐揚げが登場。
上海料理らしくしっかりと甘いが、それがいいんですよ。
そしてようやく登場の上海蟹。
生きた上海蟹を紹興酒や醤油などのタレにしっかりと漬け込んだ酔蟹が一人一杯。Mさん曰く、この店の酔蟹は三日間漬け込む長期漬け込みタイプとのことで、使ったカニは全部メス。
※お酒に漬け込むとはいえ、淡水のカニを生で食べるのは寄生虫のリスクがどうしてもあるので、安易におすすめはしません。
Mさんによる食べ方のレクチャー。
ふんどしを剥がす。
甲羅を下から剥がす。
ワサワサしたエラを外す。
飛び散るのを気を付けながら二つに割る。
パキン。
紹興酒と一緒に食べる。
食べるというか、吸う。
すごーく、うまいそうです。
食べるのがもったいないと、何度も唸っていました。
やってみましょう。
メスはふんどしが大きい。
ふんどしをパカ。
甲羅をパカ。
エラをとる。
とった。
半分に割って、吸い付く。
あー、上海蟹ってこんなにもうまいものなのか!
謎の黒い部分(内子?)と黄色い蟹味噌、それぞれ味の違う濃厚さがすごい。
生臭さはなく、私がまだ知らない旨味の塊。
そして酒がしっかりと回った身は半液状でネットリしている。甘いわー。
噛みついてチューチュー吸う訳だ。液体の蟹、うめえ。
脚の中の肉も半液状なので、大人のチューペットとして大切に吸う。
タガメが魚をとらえると口から消化液を出して、溶かしてチューチュー吸うというが、なんだかそんな気分である。
紹興酒が染み込んだ上海蟹を食べつつ紹興酒を飲むと、どこまでが蟹でどこまでが酒なのかわからなくなって楽しい。蟹と酒がとろけあうシームレス、これが酔っ払い蟹こと酔蟹か。人も酔うな。
全員が無言になってチューチューと半液状となった上海蟹に吸い付く姿を見てわかった。
上海蟹の「酔蟹」は、人間用「ちゅ~る」である。
また甲羅の味噌がうまいんだ。ここに紹興酒を注ぐのもいいでしょう。
これは知らない蟹の魅力だ。
今回は贅沢に一人一杯だけど、味がものすごく濃厚で説得力がすごいので、半杯でも満足できたかも。
そしてエビとギンナンの炒め物。プリップリ。
エビでカニを挟んできたね。
そしてまたエビ。今度はオマールエビと餅の炒め物。
前回が小型の上海蟹と餅で一同絶賛の味だったけれど、これもまた良し。
もちろん餅もうまいのだが、揚げたオマールの衣的なフニャフニャした部分が最高。
この餅、今度探して買おう。
蒸したジギョ(鰣魚)。海で育って産卵のために川へ遡上するニシン科の魚らしい。
小骨は多いけれど、クセが無い上質の白身。スープの味をしっかりと吸ってくれる。
そして上海蟹ふたたび。
今度は蒸したもので、オスとメスを半分ずつ、合わせて一杯分をいただく。
赤い紐がオス。食べ方は酔蟹と同じ。
酔蟹と蒸蟹、これは全然違う料理だ。これも繊細でうまい。
海の蟹と違って塩気が薄いからこそ、特製のタレがよく馴染む。
酔蟹は液体、蒸蟹は固体という学び。衝撃度としては酔蟹かなー。
オスは卵(内子)を持たないため、身と味噌の量が多い。
メスはオレンジ色のネットリした内子が楽しめる。これもまた「ちゅ~る」。
蟹を食べつつ大豆苗の炒め物。
エンドウ豆の新芽ではなく、ある程度育った若葉なのかな。
今回はちゃんと春雨と一緒にやってきたホタテの蒸し物。
豆鼓でしっかりと強めの味付けがされている。
汁を吸った春雨が素敵。これが食べたかったのだ。
もう満足というところで、なんと鱉(すっぱん)と鶏の鍋がドーン。
覇王別姫鍋というやつなのかな。
前回は鶏のスープで豚の団子が煮込まれてきたが、今回はスッポンである。なんだこのスープの旨味は。
食べると口の中に爪が残るぜ。
そして締めに葱油拌麺。
今日は旨味の強いものを食べ過ぎたのか、前に食べたときに比べて味がしなかったよ。
デザートにライチで終了。
店名の大沪邨は、「沪」が上海、「邨」が村という意味だそうで、中国人には意味がすぐ分かる店名らしいよ。
帰りにもう一度ルーシーと触れ合うことに成功。良き日だ。
ということで、とてもおいしかったです。
来年はがんばってモクズガニを採ってこようかな。酔蟹では食べないですけどね。
※ちょっと買い物しませんか※
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