新秋刀魚を焼くときは、天気のいい日に七輪を持って外にいき、盛大に煙をモクモクとあげながら皮をパリッと焼くのがいい。炭火で焼かれた網の上の新鮮な秋刀魚は、余計な脂をしたたらせ、その脂からできた煙で燻されるからうまいんだ。焼き上がったら皿になんかとらずに、七輪にのっけたまま醤油をたらし、レモンを軽く搾ったらできあがり。汗をかきながら一気に貪り食おう。軽く絞った大根おろしなんかあれば最高のごちそうだ。
で、今私の前にあるは、ガスコンロの上で、油のひかれたフライパンに入れられて、上から蓋をされて蒸し焼かれた秋刀魚。脂はぎっとり、皮はべっちょり、醤油はなぜか薄口醤油。
人生っていうのは、理想と妥協でできているんだなと思った。