私的標本:捕まえて食べる

玉置標本によるブログ『私的標本』です。 捕まえて食べたり、お出かけをしたり、やらなくても困らない挑戦などの記録。

カラスノエンドウ(ヤハズエンドウ)の完熟した豆は杏仁豆腐の香りがする

 

 

 

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カラスノエンドウはフェモの香りがするらしい

365日野草生活ののんさんから、唐突なLINEがきた。

 

のん:「カラスノエンドウも、フェモの香り」

 

お、おう。 ……え?

カラスノエンドウというのは道端に生えている草。正式名称はヤハズエンドウというらしいけど、一般的にはカラスノエンドウなのかな。私はカラスエンドウって呼んでいたけど。

エンドウカラスっていうと、ちょっと格好いい。ちなみにスズメノエンドウという草もあるとか。

で、「フェモの香り」というのは、岐阜県を中心に増殖している外来種の昆虫「フェモラータオオモモブトハムシ」の幼虫を茹でてから数日寝かすと杏仁豆腐(というか杏仁ですね)そっくりという話。要するに杏仁豆腐っぽい香りがするということらしい。

フェモについてはこちらの記事をどうぞ。

blog.hyouhon.com

そもそも杏仁豆腐ってなに?っていう人はこちら。

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カラスノエンドウなら若い葉っぱをちょっと食べたことがあるけれど、普通の草の味だったような。鞘はそういう香りなのかな。そういえば食べたことないな、カラスノエンドウの鞘。おままごとでしか使わないよね。

 

のん:「剥きながら食べてたら、杏仁豆腐の香りして」

 

おっと、鞘ではなく、鞘の中にある豆だけを食べているのか。よくそんな小さなものを集めて食べようと思うな。

フェモが食べるクズもカラスノエンドウもどちらもマメ科。なんとなく同じ香りがする理由というか共通点がわかるような気もするけれど、いやでもそんな話は聞いたことがないよなあ。カラスノエンドウを食べる人があまりいないだけなのか。

カラスノエンドウの鞘を集める

気になるので試してみるかと、畑の脇でカラスノエンドウを探してみる。

もちろん探すまでもなくあった。

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かわいい花ですね。

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カラスノエンドウというだけあって、エンドウの花とほとんど同じ。

人間が食べる品種と似ているけれど、ちょっと食べる気にならない存在は、なぜかカラスが押し付けられがち。カラスノエンドウとかカラスムギとかカラスウリとか。

そういえばカラスウリで麺を作ったら、すごくつらかった。

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鞘もすぐに見つかった。

この成長具合、エンドウマメだったら食べ頃なんだろうけれど、豆目的のグリンピースとしては小さいか。

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食べられない大きさではないけれど、おいしそう……ではないな。

ちょっと硬そうだよね。

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さらに探すと、群生しているポイントからちょっと外れたところに、一匹狼的に育っているカラスノエンドウがポツポツあって、そちらは鞘が立派になっていた。

日当たりの問題だろうか、栄養分の差だろうか、群れていない方が成長は早いようだ。

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しっかり太ったサヤなので、これなら豆が採れそうだ。

わざわざ食べようとは思わないけどな。

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上が未完熟、下が完熟。

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ついでに畑でエンドウの鞘、サヤエンドウを収穫していく。

やっぱり花がそっくりだ。サイズ感がカラスとタカくらい違うけど。

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さすがは品種改良された食用のエンドウ、鞘が大きくて柔らかい。

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取り残しの豆が大きくなったものを探して集める。

エンドウとカラスノエンドウ、比べると全然違うな。

確認してみると、カラスノエンドウはソラマメに近い仲間だった。ソラマメは栽培していないので手元にないな。

 ・カラスノエンドウ:マメ目 マメ科 ソラマメ属

 ・エンドウ:マメ目 マメ科 エンドウ属

 ・クズ:マメ目 マメ科 クズ属

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これまでカラスノエンドウを食べようと思わなかった理由は、同じシーズンにおいしいサヤエンドウが食べ放題だからなんだよね。

フェモの匂いがすると聞かなければ、今後も食べることはなかったかも。

未熟なカラスノエンドウと完熟のエンドウを試食してみる

帰宅後、さっそく味と香りの確認をしてみよう。

 まずは豆がまだ小さいカラスノエンドウを茹でてみたが、やはり青臭いだけで、フェモっぽい杏仁の香りはしない。どちらかというとシトラスのような爽やかさだ。一応ちょっと食べてみたが、硬くておいしいものではない。

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続いては豆が育ったエンドウマメ。まだ鞘が柔らかいサヤエンドウはよく食べているが、杏仁の香りを感じたことはない。

ここまで育つとするのかもと茹でて確かめてみたが、美味しそうと感じる青豆の香りだけ。ですよねえ。

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中身の豆も、ただただおいしそうな香りである。そして食べると甘くてうまい。これぞ食用の食べ物だ。

グリンピースは好きではないけど、新鮮なサヤエンドウの豆ならうまいんだね。

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完熟したカラスノエンドウは本当に杏仁の香りがした!

それでは本命、しっかりと豆が育ったカラスノエンドウを茹でていきましょう。

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熱湯で2分でいいかな。

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はい、茹でた!

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この時点で一応嗅いでみると、うわ、もう杏仁やアーモンドの香りがほのかにする!

すごい、本当にフェモ臭だ。

心臓をどきどきさせながら、中にある豆をチェックすべく鞘を開ける。

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開けたらフェモのように芋虫さんが鎮座していたらどうしようと思ったが、立派な豆が詰まっていた。

そして鼻を近づけると、さらに明らかな杏仁臭!

学生時代に友人(男)が、「お酒はこれが一番うまいと思うんだ」と飲んでいた杏露酒にの甘ったるい香りと青臭い記憶が蘇る。そいつは数年後、アマレットのカクテルを飲んでいた。どんだけアンズがすきなんだ。

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茹でて三日目のフェモみたいな強い香りではなく、小さな豆が集団になってようやく放つ程度の香りではあるが、明らかに杏仁。これはおもしろい。

ちょっと食べてみると、うっすら青臭い豆に甘ったるい香りが口に広がり、そのまま数粒食べ続けると、その匂いが累積していくという謎体験。なんだこりゃ。

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ちょっと入れ歯っぽい。

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まだ中の豆がそれほど育っていないものは、鞘を開いても例の匂いはほとんどしなかった。やっぱり、完熟することで、独特の匂いが生成されるようだ。

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茹でた豆だけをたくさん集めて、そこに鼻を近づけると、笑えるほど杏仁だ。

あははは。

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あれ、もしかして、完熟した鞘なら生でも匂うのかなと試してみると、鞘の外からは青臭さだけだったが、開けて豆を露出さえると、うっすらと杏仁の香りがした。

おおお、この段階でも香るのか。

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杏仁やアーモンドの香り成分はベンズアルデヒドというらしい。量によっては有毒なのかな。食品に含まれるのは、ものすごく微量だとは思うけど。

それと同じものなのかはわからないけれど、ベン豆アルデヒドということでどうだろう。

翌日になると杏仁の匂いがアップ!

取り出した豆を蓋つきの容器に入れておき、冷蔵庫で一日保管した。

フェモの香りも、寝かした方が強くなる。

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そしてフタを開けて嗅いでみると、期待通りに杏仁臭がパワーアップ!

これでフェモ二匹分くらいは香っているのでは。

あはははははは。

その昔に杏仁豆腐を種から作り、フェモラータオオモモブトハムシの幼虫を食べてその匂いに驚いた経験があってこそ、もっと身近な存在であるカラスノエンドウの豆が同じ系統の香りだというのが笑える。

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味は青臭いけど、香りは甘ったるいというギャップ萌え。

別に食べなくてもいいとは思うけど、ちょっと嗅いでみるといいかもね。

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皆さんもこの機会に、自分のイメージと違う冒険をした香水にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。なんてな。

※その辺の植物をやたらに食べるのはおすすめしません。特に多食はダメよ。

 

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