ブログなんで旅先でカレーを食べただけの話とかどうでしょう。
先日、つっても結構前ですが、大阪取材ツアーにいってきまして、取材先である絹延橋うどん研究所(うまいうどん屋)の所長(カレー好き)が、
「中津のSOMA(ソーマ)っていう店のカレーがうまいんや」
と申しておりまして。私、カレーに関しては全然詳しくないんですが、話を聞く限りでは相当うまそうなんですよ。
中津というのは、大阪初開催となる製麺会を明日おこなうシカクさんのある街。シカクからすぐ近いならば行かねばならぬだろうということで、カレー日和となったピーカンの土曜日に、ラーメンの仕込みをする前に軽く食べてみようかなと立ち寄ったところ、これがオープン前から大行列。
中津っていう街は実際に来てみるとわかるんですが、行列ができるような店がある感じの場所じゃないんですよ。しかもその店は遠目からだと何屋なのかまったくわからない店構え。あとでシカクの店長にきいたら、土日はいつもこんな感じらしい。へー。
行列を見た通りがかりのおばちゃんが行列に話しかけて、
「ここ何屋?え、カレー?それにしては匂わんな」
「いやそりゃあんたが汗臭いからや」
「あっはっは。加齢臭のせいか!」
みたいな会話をするなど。
あとジャルジャルを足したみたいな彼氏を連れた女性が、話を聞き流しながらツムツムをずっとしていた。
で、しばらく待ってようやく入店。15席くらいと中待ちが5席という感じ。ということで、もうちょっと待つことになるのだが、こういう中で待つ時間はそんなに嫌いではない。
なにやら民族系ダンスミュージックみたいな音楽の流れるオシャレスペース。DJブース的ななにかもあるし。そしてお客さんはみんな真剣に目の前のカレーを食べて、いやカレーと会話をしていて、人間同士の会話はほとんどゼロ。意識高い系のカレー店なのだろうか。
そして漂ってくるスパイスの香りが強烈で、花粉症の鼻が急に通ってきた感じ。医食同源っていうやつですか。まだ食べてないけどさ。
それからしばらく待ち、カウンター席に通される。キッチンを担当するのは私と同年代かあるいは年下くらいの日本人男性。七三分け。そして接客は日本人女性。こちらは六四分けくらいか。
インド人とかネパール人が作っている訳ではないし、気難しい頑固主人が作っているという訳でもない。よくわからない。
さてメニューだが、チキンキーマとトマトカレーに牛筋をトッピングしたものをセレクトしてみた。せっかくなので欲張った。辛さは5までが無料で、よくわからないので3にしておく。事なかれ主義。
土日だからなのか大盛りはやっていないそうで、隣に座ったお客さんが、
「ご飯少な目で」
と注文していて、ならそのご飯おれにくださいといいそうになった。いわないけど。
待っている間に厨房をのぞいていると、大鍋から仕上げ用の小鍋にルーを取って、注文に合わせて辛さやらトッピングやらを個別に仕上げるスタイルのようだ。
やってきたカレーは、なじみのあるトロリとしたルーではなく、ゴツゴツしたスパイスの連合軍。いや多国籍軍。あるいは傭兵部隊。そしてご飯は玄米である。こうきたか。普通の合い掛けはライスを挟んで並列の関係だが、ここではトマトカレーをベースに、チキンキーマが縦に重なっている縦列の関係だ。
乗っているのは福神漬けにラッキョウではなく、野菜のピクルスにウコンのみじん切りだろうか。
肝心の味だが、最初は個性派ぞろいのスパイスそのものを食べているようだったが、食べ進むにつれてカレーとしての理解度が深まり、そして口の中でうまさとして積み重なっていくのがおもしろい。バラバラのようでチームプレイだ。ドカベンの明訓高校か。
そして牛筋はゼラチン質の肉だけではなく、大根とコンニャクの入った居酒屋スタイル。これはこれでうまいが、最初の一杯としてはちょっと変化球の注文をしすぎたかな。
一口ごとにこのカレーへの印象が変わり、だんだんと一つ一つのスパイスの言葉が聞き取れてくると情報量の多さに気が付く。口の中が聖徳太子状態だ。スパイスに話しかけられすぎ。そりゃみんな無言になってカレーの声を漏らさず聞こうとするさ。
たぶんこの一皿で私の中でのスパイスへの理解が20年分くらい進んだ気がする。スパイスってこうやって使ってもいいのか。なるほど、これはカレーマニアが語りたくなるカレーなのだろう。カレーマニアじゃなくてもこれくら語りたくなるくらいなんだから。文明開化の音がしたぜ。
インド系でも日本系でもない、きっとオリジナルの系統。ニューウェイブ系。
二階にギャラリーがあって、そこへの階段がなかなか急でおもしろかった。
ということで、ソーマにいったらシカクで「趣味の製麺」を買ってくださいね。「捕まえて食べる話」も売ってるよ。
シカクの店長も店員のスズキナオも製麺機を買ったらしいので、製麺の話をすると喜ぶと思います。