※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2013年12月24日に掲載した記事の転載です。
年末の忘年会シーズンに備えて、畑でウコンを栽培してみた。これで二日酔い知らずのスーパービジネスマンになれるはず。
二日酔い対策といえば、やはりウコンではないだろうか
忘年会やらクリスマス会やら新年会やらで、飲み会の回数が多くなるのが年末年始。ついつい飲みすぎてしまって、翌日激しい後悔に襲われる恐れがあるシーズンだ。
こんなふうに酔っぱらった人やクマをよく見かけるシーズンですよね。
私はお酒が好きだけれど、決して強くはなく、日本酒なら2合が適量なんだけれど、3合目に飲む酒こそがおいしく感じるというタイプ。
そこで今年は万全の対策で年末を迎えてやろうじゃないかということで、5月にウコンの栽培を始めてみた。
備えあれば憂いなし。半年先の失敗を見越した、己への先行投資である。
まあウコンの薬効なんて気休め程度かもしれないが、その気休めが欲しいだ。
園芸店でウコンの種芋(という言い方でいいのだろうか)を買ってきた。
ウコンエキスの入ったドリンクや錠剤は薬局やコンビニなどで多数売られているが、やはり収穫したばかりの生ウコンに勝るものはないだろう。
園芸店で仕入れた情報によると、ウコンというのはジャガイモなどと同じように、種芋ならぬ種ウコンを植えて育てる植物だそうで、ウコンを土に植えておけば、それが秋には何倍にもなって帰ってくるらしい。
ウコンには花の咲く時期によって、春ウコン(キョウオウ)と秋ウコン(ウコン)があるそうだが、お酒にはクルクミンという、ゆるキャラみたいな名前の成分がいいそうなので、育てるのはクルクミンがたっぷりの秋ウコンだ。
その見た目はほぼショウガで、実際ショウガ目ショウガ科の植物である。
なにかのサナギじゃないですよ。
俺のウコンを収穫する
ウコンを植えてから五か月が経過して10月になった。いつになったら花が咲くかなと楽しみにしていたのだが、バナナみたいな葉っぱが出てきただけで、ちっとも花が咲いてくれない。
やはり南方系の植物なので、埼玉ではちょっと寒すぎるのだろうか。
あまり大きくならなかった。
そしてそろそろ忘年会のスケジュールが決まりだす11月の中旬になると、花が咲かないまま枯れてきてしまったので、仕方なくここで収穫とする。
果たして、植えたウコンはしっかりと増えているのだろうか。
花が咲かないまま枯れたウコンに己を投影する冬。
茎をしっかりと持って、大きなカブのおじいさん気分でうんとこしょとウコンを引っ張ると、わりとあっさり抜けてしまった。
ズボっと抜けた。
収穫したウコンの量は、植えたウコンの2.5倍というところだろう。
今年の流行語でいえば、「2.5倍返しだ!」である。
若干中途半端な感じはするが、銀行の金利と比べたならば、これでもかなりの高利回りだといえよう。
まあジャガイモやサトイモはもっと増えてくれるけどさ。隣に植えたカボチャに栄養を取られたかな。
種として植えた分も、葉っぱに栄養が吸い取られて干からびたという訳ではないようなので、これも一緒に持ち帰ることにした。
茶色いのが植えた分で、黄色いのが増えた分。
二年物のウコンは色が濃い
収穫したウコンはとりあえず陰干しをしておいて、12月になってそろそろアルコールの摂取量が増えるというタイミングで、満を持して少しずつ食べてみることにした。
左が種ウコン、右が新ウコン。
最初に植えた種ウコンと、そこから増えた新ウコンを切ってみると、断面の色が全然違った。
種ウコンの方が、断然濃いのである。
ほら、全然違う!
ウコンは多年草なので、もしかしたら年を重ねるにつれで、だんだんと成分が蓄積されていくのかもしれない。
皮を剥いてすりおりしてみても、その色の違いは歴然。ウイスキーのように熟成という言葉がよく似合うオレンジ色だ。
もしかしたら新旧の問題ではなく、育ちが悪かったので新ウコンの色が発育不良で薄いだけなのかもしれないけど。ウコンの色の濃さはクルクミンの量に比例するという話もあるし。
さてどちらが新ウコンでしょうか。
生ウコンの味は?
ウコンエキスドリンクと居酒屋のウコンサワーでしか味わったことのないウコンの味を確かめてみるべく、まずはそのまま食べてみることにした。
良薬は口に苦しという言葉がぴったり。なんだかショウガとニンジンを足して漢方薬の苦みをガムシャラに混ぜたような強烈な味。これが生ウコンの力なのか。
ニンジン嫌いな子供が、無農薬栽培の昔ながらのニンジンを食べたような感じだろうか。
そして二年目の種ウコンは、色に比例してその味も濃い。これは効く。たぶん効く。なにかに効く。
ショウガ気分で冷奴に乗せてみたが、渋い冷奴なんて初めて食べたぜ。
ところでウコンに含まれるクルクミンの摂取量については諸説あるが、一日あたり約30ミリグラムがとりあえずの目安らしい。メジャーなウコンエキスドリンクに含まれるクルクミンもだいたいそれくらいのようだ。
秋ウコンのクルクミン含有量は約3パーセントらしいので、私の計算が確かならば、10グラムも食べればいいことになる。
いや違う、1グラムだ。
え、1グラムでいいのか。過剰摂取に気を付けなくては。秋ウコンはクルクミンだけでなく鉄分などのミネラルも豊富に含まれているので、過剰または長期摂取をすることで、消化管や肝臓などに障害を起こすことがあるらしい。
なかなか良い色になった。
飲んでみると、これがちょうどよく、まずい。まずいけれど、飲めない程ではなく、なんだか体に良さそうなまずさなのだ。葛根湯や濃い杜仲茶が好きな人ならいけると思う。これが冷めると2倍まずくなり、おろしたウコンを加えると5倍まずくなる。熱いうちにハチミツや黒糖を入れると飲みやすそうだ。
ジンジャーエールで作るウコンエール
翌日はジンジャーエールにすりおろしたウコンを加えた、ウコンエールで乾杯だ。ジンジャーエールにおろしショウガを加えて飲んだことはあるのだが、さすがにウコンを入れるのは初めてだ。
見た目はかっこいい。
細長いグラスで作ったウコンエールは、オシャレなバーで出てきてもおかしくないような高級感があり、その味に期待をさせてくれる。飲んでみると、甘みが強い市販のジンジャエールにウコンの苦さとクセが加わって、なかなか大人の味わいである。ただウコンの固形物が口の中に入ってくると、急に口の中に違和感が広がって鳥肌が立つ。誰かにオレンジのカクテルだよと、だまして飲みたい逸品である。
濾して飲んだらバッチリうまかった。炭酸が少し抜けちゃったけど。
ターメリックライスとターメリックカレー
次は料理で使ってみよう。ウコンといえば、スパイスでいうところのターメリックである。ターメリックといえば、ピッカピカ。いやそれはメタリック。
愛媛で食べるといわれている、伝説のポンジュースご飯みたいだ。
ターメリック(ウコン)とショウガとニンニクでカレーを作る。
ターメリックライスとターメリックカレーのダブルターメリック。
美味しそうに出来上がったダブルターメリックカレーだが、ちょっとウコンを入れすぎたようで、全体的にウコンの味しかしないカレーとなってしまった。はっきりいって苦い。たぶん10分の1くらいの量でちょうど良かった気がする。過ぎたるは猶及ばざるが如し。ウコンの過剰摂取は味の面でも良くないようだ。
そこで翌日はカレーを山形の離島である飛島のイカスミブラックカレー(レトルト)にしてみたところ、濃厚なイカスミの風味とスパイシーなターメリックライスの相性がバッチリ。黒と黄色のマリアージュだ。
飛島のイカスミブラックカレー、思ったよりも黒く、そして美味しかった。
今年の忘年会メニューはこれだ!
ここまででウコンの味と特徴をなんとなく把握してきたところで、自宅で簡単にできる忘年会メニューを提案してみたいと思う。豚肉のショウガ焼きならぬ、ウコン焼きである。今回はウコンのクセに対抗する意味で、豚肉の中でも味の濃いカシラの部位をセレクトしてみた。
豚のカシラをウコンに漬けて焼くのだ。
一口サイズに切った豚のカシラをウコンと醤油と酒に漬けて焼いただけなのだが、これがとってもうまかった。辛くないカレー味。ウコンの程よい苦みが濃い味付けにマッチして、酒のつまみに最適。これはうっかり酒を飲みすぎて、クルクミンの作用を台無しにする可能性が高い。
ウコンの独特な香りが、中東とかインドとか、どこか遠くの国を旅した気分にさせてくれる。行ったことはないけれど。
カレー色だけれど辛くはないよ。
ウコンハイで乾杯!
この豚カシラのウコン焼きに合わせるべき酒は、やはりウコンハイではないだろうか。茶漉しにすりおろしたウコンを入れて、冷凍庫から取り出した冷えたジョッキにセットし、そこに酎ハイのハイボールを注ぐという作り方でどうだろう。
これぞ本物のウコンハイ。
この組み合わせなら酔わないような気がする。
ということで、こんな感じで12月は1日に生ウコン1グラムと味噌と少しの野菜を目安に食べてみたのだが、やはりお酒を飲みすぎると酔っぱらうし、翌日はしっかりと二日酔いになることがわかった。どちらかというと、「ウコンを毎日食べているんだから」と、つい飲みすぎることが多かったような気さえする。
しかしである。ターメリックが世界中でスパイスとして愛されているだけあって、生ウコンの苦みは量を加減さえすれば調味料として興味深いものがあることがわかったのは収穫だ。今後は二日酔い対策というよりも、異国情緒を楽しむ調味料として、ウコンを程々に楽しみたいと思う。もっと気軽に使えるように、チューブ入りのおろし生ウコン、あるいはウコンを入れたおろしショウガが発売されてほしい。
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