※フィクション
学生時代の友人で、今も連絡を取り合う唯一の存在と会ってきた。
彼はちょっと遠いところに住んでいるため、会うのは2年ぶりくらいだろうか。上京した時に、タイミングが合えばなるべく会おうという感じの距離感。
なぜかテラスの池に、人が乗るには小さいけどかなり大きな船が浮かんでいるカフェみたいなところで待ち合わせて、「どうよ、最近」とお決まりの切り出し方で近況報告。
共通の友人が本を出したね。あの先輩が亡くなっちゃったね。会ったらと印象が違うとまたいわれた。誰かに話したかったけれど、その相手がいなかった共通の話題を消化していく。
オフィシャルな(というほどのものでもないが)近況自体はツイッターを眺めていればお互いわかるので、その内側にある出来事をポツポツと池を観ながら話す。
相変わらず何物にもなっていない。努力をするのはやぶさかではないのだが、なにを頑張ったらいいのかが未だにわからない。遠回りをしている時間もないので、何が向いているのかを誰かに教えてほしいよね。そんな話をローテンションのノンアルコールでする。これをやれと言われることが無理で、フリーの立場にいるのだが。
高校一年生の授業で習った、モラトリアム(猶予期間)という単語を思い出した。そう、僕らは学校を卒業して20年経って、なんとまだモラトリアムの時を過ごしているのだ。
終わらない自由、解決しない悩み、途切れることのない迷い、決まることのない方向。今、どこにいるんだろう。
人生はあと何年あるのか知らないけれど、とりあえず後20年くらいは働かないといけないのだろうか。でも5年後の自分が想像できない。いや1年後だって怪しいもんだ。はははと力なく笑う。
本当はやるべきことも、やらないといけないことも、やったほうがいいこともわかっているけど(それが正解なのかはわからないが)、そのやる気が起きないんだから困ったものだ。
なにかいいことがあったら報告してよといって、駅で別れた。
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