私的標本

玉置標本によるブログです。 捕まえて食べたり、お出かけをしたり、やらなくても困らない挑戦などの記録。

無添加・天日干しの干物作りを体験してきた

※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2011年4月5日に掲載した記事の転載です。

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静岡県伊東市にある島源商店では、昔から添加物を一切使わずに天日干しで干物を作っているという。その伝統的な干物の作り方を教えてもらった。

まずは伊東魚市場でセリを見学

今回お世話になる島源商店の内田さんと知り合ったのは、船橋漁港で水揚げされた魚の干物試食会。魚のサイズが小さかったり、おいしいけど知名度がなかったりと、様々な理由でほとんど値段のつかない魚を、干物にすることで付加価値をつけようという試みだ。

試食会に食べた自然な味の干物はとてもおいしく、その場の勢いで干物工場を見学させていただく約束をしたのだが、口約束で終わらせず本当に伊東までやってきてしまった。

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こちらが島源商店の内田さん。始発電車に乗って本当にやってきましたよ。

今回はせっかく伊東まで来たのだからということで、まずは魚の仕入れ先である伊東魚市場を案内してもらった。漁師が今朝獲ったばかりの魚が、漁船やトラックで運ばれてきて、次々にセリへと掛けられていく。

島源商店ではここに水揚げされた魚の種類や値段に合わせて仕入れをおこない、自社の加工場で臨機応変に干物を生産している。

また魚は場所によってたくさん獲れるシーズン、食べておいしい季節というものが違うので、たとえば伊東港でアジが水揚げされない冬場は、長崎などから仕入れて冷凍しておいたものを使ったりもする。季節外れの鮮魚を高く買って干物にするより、脂の乗った旬の魚を急速冷凍して作った干物のほうがおいしいそうだ。

そういったノウハウがあってこそ、その延長線上で船橋港で水揚げされた売り先のなかった未利用魚が、伊東でおいしい干物へと生まれ変わることができる訳である。

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市場に横付けされた漁船から水揚げされた魚が、すぐにセリへと掛けられる。

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セリに並ぶ魚の種類、値段は毎日違うので、仕入れ担当である内田さんの役割は大きい。

屋上で干物を干している干物屋さん

島源商店は干物屋が多く並ぶ国道134号線沿いにあり、目の前がすぐ海という気持ちのいい場所。見上げれば店の屋上で魚を干しており、「本当にここで天日干しの干物をつくっているんだ!」と、なんだか感動してしまった。

ここでは製造だけではなく店頭販売もしているのだが、保存料を使用していない干物なので基本的に急速冷凍して保存しているため、カウンターには写真だけが並んでいる。

冷凍モノというとイメージがあまりよくないかもしれないが、きっちりと急速冷凍した真空パックの干物ならば、ほとんどその味を損なうことはないそうだ。

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ほら、本当に屋上で魚を干しているでしょ。

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写真だけのショーウインドウ。もちろん店員に声をかければ、おすすめ商品の実物をみせてもらえます。

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干物は写真だけだけど、捌いているところは丸見え。ガラスに目の前の海が写り込んでいる。

魚の開き方を習う

さっそく干物の作り方を習うべく、髪の毛が落ちないためのキャップをかぶり、店内の加工場へと移動。私も釣った魚などで干物をたまに作るのだが、プロから教わるのはもちろん初めて。いろいろと発見がありそうで楽しみだ。

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包丁は研いでいくうちにだんだんと小さくなってしまうそうです。

取材に同行していただいた地球のココロ編集部のシマミズさんと一緒に、内田さんや大ベテランのおねえさん達からマンツーマンでアジの開き方を教わる。

魚を捌くことに関してはある程度自信があったのだが、そこはしょせん素人。プロはまず包丁の持ち方、魚の置き方からして自己流と違っていて、すべての工程がとても勉強になった。私がまだ学生だったら、海も近いし夏休みにでも住み込みでバイトしたいくらいだ。三日で飽きそうな気もするが。

ほとんど魚を捌いたことがないといっていたシマミズさんも、最初こそ声にならない声を上げていたが、何匹かやっていくうちに「中骨に沿って包丁を滑らせる感覚」もわかるようになり、目を輝かせながら黙々とアジを開いていた。

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おねえさんにワンツーマンで捌き方を教わるシマズミさん。やり方さえわかれば、こんなに楽しいことはない。

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「このアジ、ぜんぶやっていいですよ」といわれて、「こんなに!」と思ったけれど、やってみると「もっとやりたい!」となってしまう。

よく真水で洗って塩水に漬けこむ

アジを開いたことで形だけは干物っぽくなったが、干物作りの工程には、捌く、洗う、漬ける、干すという作業がある。

我々素人が捌いた血だらけのアジは(うまい人が捌くと、内臓をきれいに出すので血が余りつかない)、真水できれいに洗っていただき、塩分12%の塩水の中で15分間ダイビング。

漬け終わったらもう一度真水で洗って、表面だけが塩辛くならないようにしてから網に並べて塩分チェック。

これらの工程は料理でいうところの「味付け」にあたる大切な部分。塩分濃度、漬ける時間などは、気温や魚の状態などによって微妙に変わってくるそうで、毎回必ず数匹使ってテストをして、ちょうどいい塩加減で仕上がるように調整しているそうだ。

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真水のシャワーで内臓や血を流し、生臭さをとる。

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さらに真水のプールでもう一度洗う念の入れよう。

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塩度計で漬け汁をチェック。

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漬け汁となる塩水は、新しいものよりも何度か使いまわしたものの方が、魚のエキスが染み出て味わいが深くなるそうだ。延々使いまわすとクサヤになるのかな。

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捌いた半分は、島源商店オリジナルのバジルをたっぷりと使ったハーブ干物にしてもらった。

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表面が塩辛く、そして生臭くならないように、真水で漬け汁を洗い流す。

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干物専用だというセンサーで塩分濃度を最終チェック。

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もうこの段階で、十分にうまそうだ。

屋上で天日干しにして完成

干し網に並べた干物と一緒に屋上へと上がると、そこは目の前一面に海が広がり、上からは太陽が優しく顔をみせ、優しい風が流れる最高の空間だった。

今日は最高の干物日和。ハンモックでも吊るして、私も干物になりたい。

よく店頭で干物を干している店もあるけれど、ここなら車の排気ガスも全く気にならないし、太陽や風を遮るものがなにもない。

すべてが自然任せなので、天候次第で干す時間や風の当たる角度を変えたり、雨が降ったら取り込んだりと手間はかかるだろうけれど、ここで干した干物がおいしくない訳がないと思わせるだけの説得力がここにはある。

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海風が最高に気持ちいい場所です。

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これは船橋港で水揚げされたセイゴ(スズキの子供)。

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こちらは伊東港のウマズラハギ。どっちも鮮度抜群の魚を干物にしているので、身がプリプリしている。

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後ろはすぐ山。西風の日は、天城越えをした風が吹く。

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夏祭りの日には、目の前の堤防から花火が上がるそうです。いーなー。

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サバやウマズラハギなど中骨をはずして干物にする場合、残った骨を捨てずに干してオマケにすることも。揚げて塩でも振ればいいツマミになりそうだ。

干物を試食しながら、干し上がるのを待つ

先ほど捌いたアジが干し上がるまで、この日の天候なら3~4時間ほど。干物というのは一日でできてしまうのだ。

アジが干物になるのを待つ間、最高に気持ちのいい屋上で、干物を試食しながら待たせていただいた。いやー、早起きして伊東まできて、本当によかった。今日は最高の遠足だ。

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バーベキューというと肉というイメージですが、干物のバーベキューもいいですよ。

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一度食べてみたかったハーブサンマ。干物を食べて白ワインが欲しくなったのなんてはじめてだ。

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干物とおにぎりと静岡のお茶。これだけでもぜいたくなお昼ごはんなのに、さらにブリの刺身までいただいた。

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時間があったのでパッキングの様子も見せてもらった。真空パックにしたものを、金属探知機でチェック。万が一釣り針などが入っていても、この段階で食い止めることができる。

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島源商店三代目社長の島田さん。

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これは島田社長が書いた本なのだが、左のはだいぶ前に読んだことある本でびっくりした。そうか、私の干物作りの源流はこの店だったのか。

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なんてやっているうちに干物完成。干し上がりのチェックはもちろん人の手によっておこなわれる。

島源商店の干物作り、確かに無添加で天日干しだった。保存こそ冷凍庫だが、作る過程は本当に手作り。

一匹ずつ魚を捌いて、真水で洗って、塩水に漬けて、天日で干す。昔からおこなわれてきた干物作りが、ここでは今でもそのままおこなわれていた。

自分で作った干物、当然おいしかったです

さてできあがったアジの干物だが、素人が作った干物を商品として店頭に並べるわけにはいかないので、全部もらってきてしまった。ありがたや、ありがたや。

自分たちで作ったといっても、実際は捌いただけで、他の工程はほとんど島源商店の方にやってもらったのだが、それでもやっぱり手前味噌ならぬ手前干物。抜群においしかった。

一緒に食べた家族やあげた人もおいしいといっていたので、客観的にも相当うまい干物なのだろう。特にハーブアジは今まで食べたことのない風味だった。

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これがハーブアジの干物。脂の乗ったアジとバジルの風味が合うんだ。

中骨が右側にあったとおもったら途中から左側に移動していたりと、愛嬌たっぷりの干物達。

ごちそうさまでした!

【参考サイト】
島源商店

 

 

 

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