私的標本:捕まえて食べる

玉置標本によるブログ『私的標本』です。 捕まえて食べたり、お出かけをしたり、やらなくても困らない挑戦などの記録。

田舎暮らしのインタビュー2:最高の波を求めて外房暮らしを選んだ人

※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2010年5月5日に掲載した記事の転載です。

f:id:tamaokiyutaka:20180209154449j:plain

いつかは田舎暮らしをしたいと思っているのだが、実際に住んでみたらどうなのだろう。将来の不安を解消するべく、地方に移り住んだ人達の話を聞いてみることにした。第二弾は最高の波を求めて外房暮らしを選んだ人の話。

波を求めて世界を旅したオンくんにインタビュー

インタビュー二人目は、一人目のカズさんから紹介してもらったオンくん。ちょっと年上だけど、あえてくんづけにしてみた。彼は北海道生まれの北海道育ち。

24歳から26歳のときにワーキングホリデーで海外にいき、仕事をしながらサーフィンなどを楽しむ生活ののち、帰りにバリに寄ってそのまま一年間滞在。そこで現在の奥さんと出会い、帰国後は友人の家や車に泊りながらサーフボードとともに日本を旅し、この外房に面したいすみ市にたどり着いた。

f:id:tamaokiyutaka:20180209154507j:plain
奥さんと犬二匹と、自分で建てた家で生活中のオンくん。

そして現在は、自分で立てた10坪のこの家に夫婦で住んでいるという、スローライフやロハスという言葉ではあわらせない経歴の持ち主である。

家を自分で建てた男

---さっそくですが、なんでここに住むことを決めたんですか?

「バリから戻って宮崎に滞在したり、かみさんの実家がある埼玉からいろいろな海に通ったりしたけれど、『やっぱ千葉でしょ!』って。波を求めて日本を回った結果、トータルするとここがどんな時でも波があるかなと。」

f:id:tamaokiyutaka:20180209154536j:plain
飼い主の人柄がみえてくるとても人懐っこい犬。

---波で住むところを選んだんだ。この家は自分で建てたって聞きましたけど。

「最初はこっちでアパート(といっても一軒家)を借りていたんだけど、こっちでできた友達が自分で家を建てているのをみて、もともと僕も18から5年間建築の仕事をやっていたので、その時を思い出して。三月に土地を更地で買ったんだけど、アパートを五月にでないといけなかったから、一人友達に手伝ってもらって賞味二カ月でとりあえず住めるように突貫工事。」

---家って個人で建てられるものなんですね。

「ホームセンターで揃えた材料だけで建てたけど、もう六年経つのかな。その間のすごい台風とかもクリアしたから。自分で建てたほうが全然安いですよ。やっぱり一番高いのは浄化槽かな。電気工事は回路とか考えると頭痛くなっちゃうんで電気屋さんに頼みましたけど。」

生活費をかけない生活

---地方って仕事が不安ですよね。

「仕事はまあ適当に。僕も自由業。でも家を建てちゃったから、もうお金かからないし、今は酒もジュースと変わらないくらい安いしね。かみさんが週に三回くらいパートしているし。野菜もちょっと育てているし、近所からたくさんもらったりするから、買うのは米とか肉とか魚くらいかな。」

f:id:tamaokiyutaka:20180209154600j:plain
冬の暖房はほぼ薪ストーブ。廃材を利用するので暖房費がかからない。

---具体的にどれくらいあれば暮らせるものなんですか。

「うーん、最低月二、三万あればどうにかなるかな。都会の人から考えたら、ありえないくらいお金を使わないというか、使うところがないというか。車ももらったりするし。田舎だとくれる人多いんですよ。近所の人達はすごいいい人たちばかりだから、今頃はよくドアにキャベツがかかっています。他にもスイカとかメロンとか。」

---それはオンくんの人柄がなせる業のような気がします。

「仕事がなかったりして苦しいときもあるけど、自分の『好き』を選んで生きているんですから。」

f:id:tamaokiyutaka:20180209154623j:plain
家の周りは畑と田んぼだらけ。海の近くとは思えない平野っぷり。

95点の田舎暮らし

---もう地元に友達とか増えましたか。

「自由な人じゃないと気が合わないし、こういういいかたしたらおかしいんだけど、仕事をバリっとして、立派な家を建てるっていうようなライフスタイルとは、僕ら全く違うじゃないですか。だからカズさんとかと気が合うんじゃないですか。でもそこにはみんなすごい苦労があって、こういう生活をしているんだと僕は思います。」

---ところで奥さんもサーファーなんですか。

「知り合ったころは。今はやっていないけど。籍を入れてからまだ一年か二年かな。バリで付き合いだしてから10年近くもうずーっと一緒なんですよ。」

f:id:tamaokiyutaka:20180209154656j:plain
奥さんの存在が、ここでの生活をより豊かにしているようです。

f:id:tamaokiyutaka:20180209154711j:plain
野菜はたくさんもらえるので、この広さの家庭菜園でも十分。

---話を聞いているといいことばかりのようですが、ここに住んで悪い点ってなにかありますか。

「悪い点、ないですね。しいて言えばちょっと不便みたいな。でももう、良い点は95点とか。塩害はあるけど気にしないですね。サビで車のボンネット変えたりしたけど。ここで海から500メートルくらいかな。」

田舎暮らしのアドバイス

---田舎暮らしを考えている人にアドバイスをお願いします。

「僕は都会からここへ引っ越してきたというのとはちょっと違うけど、まず思い切った行動をしてみること。いっちゃってから考えてみれば大丈夫じゃないかな。」

f:id:tamaokiyutaka:20180209154822j:plain
普通は大丈夫じゃないと思いますよ。

---とりあえず引っ越しちゃえと。

「でも地元につてがないと、家とかの大きな買い物はぼったくられるよね。だから最初に1年間アパートに住んでよかった。」

---なるほどー。

「自分達の中ではこれ、仮の家なんですよ。今、庭になっているところに将来的には自分でまた建てます。宝くじでも当たったら、奥の畑も買いとって、馬とか牛とか買いたいですねー。野望は大きく。」

f:id:tamaokiyutaka:20180209154840j:plain
次に来たらもっと大きい家が建っているかもしれない。

インタビューを終えて思ったこと

オン君がこの土地に住み始めた理由は、「波がいいから」と、とても単純だった。その生き方には憧れてしまうが、全国をまわって住む場所を決め、自分で家を建てるというのは、並大抵の行動力ではない。そんな生活に奥さんがついてきているというのがまたすごい。

私の場合、釣りが好きだけど、「魚が釣れるから」という理由だけで、住む場所を決められるだろうか。

「はたから見たら『お前、大丈夫か?』っていう感じですよ。」と笑うオン君。たった一時間の付き合いだけど、確かに大丈夫なのかなと思うところもあるが、彼の場合は大丈夫なのだと思う。たとえ大丈夫じゃないことがあっても、笑顔の裏に大変なことがたくさんあっても、やっぱり大丈夫なのだと思う。

彼のしなやかな気持ちの強さと自由な生活スタイルに触れ、一口に田舎暮らしといっても、いろいろな暮らし方があるんだなと、ちょっとわかった気がする。

f:id:tamaokiyutaka:20180209154916j:plain
話を聞いていたら、だんだんと引越ししたくなってきた。どうしよっかなー。

 

 

 

Copyright (C) 私的標本 All Rights Reserved. by 玉置標本