※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2012年4月5日に掲載した記事の転載です。
春先に出回る新酒の酒粕。いままでほとんど食べたことがなかったのだが、なにやら体にいいらしい。そこで積極的に料理してみることにした。新酒の酒粕で作る、新種の酒粕料理である。
春は酒粕の季節です
先日、ブリで有名な富山県の氷見市というところにいってきた。
残念ながらブリのシーズンは終わっていたが(じゃあなにをしにいったんだという話ですが、それは後日だ)、新酒のシーズン到来ということで、64代横綱、曙関の横綱昇進パーティでも飲まれた「曙」という昔ながらの日本酒を作っている高澤酒造場の店頭には、酒林がぶら下がっていた。
店頭にぶら下がっているのが、新種のできたことをお知らせする酒林。杉玉ともいいますか。
もちろん新酒は買うとして、もうひとつ、ぜひこの時期手に入れたのが酒粕である。
搾りたての日本酒があるのならば、搾られたての酒粕もあるのが道理。ここ高澤酒造場は富山県内の酒蔵で唯一、昔ながらの「槽搾り」という方法を守っているため、酒粕といえども十分に旨みが残っているのだ。
という話を、浅草の飲み屋で知り合ったサッカー好きの女性から聞いたんですよ。
売っていました、お目当ての酒粕。
酒粕といえば、最近ラジオでやたらと耳にする通販番組で紹介している酒粕を使ったというダイエットサプリがとても気になっていて、もうひと押しされたらうっかり買いそうになっているのだが、サプリを買うくらいなら酒粕をどんどん食べたほうが早いはず。
今まで酒粕をほとんど食べたことがなかったのだが(あまり食べ物として認識していなかった)、せっかく素敵な酒粕も手に入ったので、毎日の食生活に取り入れてみることにした。
これできっと水着の季節までに細マッチョだ。
袋の上からでもプーンといい匂いがしています。このまま食べてもけっこうおいしい。
とりあえず200グラムずつ小分けにしてみた。
酒粕の甘酒を作ってみる
酒粕を使った料理といえば粕汁が思い浮かぶのだが、氷見で出会った方から甘酒にするとおいしいと教えていただいた。甘酒といえば米麹とコタツでつくるというイメージがあったのだが、酒粕からでも作れるのか。
「うちの甘酒は、あそこの酒粕!」だそうです。
作り方は、酒粕を水でふやかしておいて、砂糖を入れて煮るだけ。隠し味に塩を少々。仕上げにおろし生姜を入れたら完成。
初めて作ってみたけれど、なんだかインスタント食品みたいな簡単さだ。これでいいんだ。
一時間くらい水に漬けておくと、簡単に溶けます。
分量は酒粕50グラム、水300グラム、砂糖大匙1、塩ひとつまみでやってみた。ちょっと薄かったかな。
さっそく温かいうちに飲んでみると、これがすっきりしていて旨い。酒粕の味だけで勝負しているところが好感持てる。日本酒の香りはするけれど、悪い意味での酒臭さというものは感じられない。子供向きの味ではないけどね。
冷凍庫で凍っていた生姜を、皮ごとたっぷりおろしてみた。
市販の甘酒は駅のホームにある自動販売機などでたまに買って飲むのだが、手作りなら甘さも濃さも自分のさじ加減で決められるのがうれしい。
昔から夏バテ時の栄養補給には甘酒がいいといわれているが、風邪をひいたときなどにもうれしいかも。もともとの素材はお米なんだし、おかゆ気分でどうだろう。
お供は氷見の旅館の女将に聞いた、酒粕を焼いただけのもの。砂糖醤油でいただくそうです。
調子に乗って牛乳で甘酒を作ってみる
酒粕をお湯に溶かしただけの甘酒がこれだけおいしいのだから、ちょっとアレンジしたらもっとおいしくなるかもしれない。
こういうふうに調子に乗るとだいたい失敗するのだが、勢いで牛乳を使った甘酒を作ってみた。
作り方は酒粕甘酒とほぼ一緒で、水の代わりに牛乳を使い、なんとなく生姜の代わりにシナモンを振ってみた。
牛乳も酒粕も白いので、シナモンの茶色が映えますね。
酒粕牛乳甘酒(名詞が三つ並ぶとなんだか変ですが)、これが飲んでみると、とても好みの味だった。ロイヤルミルクティーやカフェラテみたいな、ちょっとリッチな感じがする甘酒。適当に入れてみたシナモンも相性がいいみたい。
これに合わせるのは、酒粕とバターと塩少々を練ったものをたっぷりと塗った酒粕バタートースト。痩せたいんだか太りたいんだかよくわからないメニューだが、なかなかおいしい。
乳製品と酒粕の相性がいいということは、クリームシチューやグラタンに使ってもいいかもしれない。
酒粕バター、塩じゃなくて、たっぷりの砂糖と練ってもいいかもね。
さらに豆乳で甘酒も作ってみる
牛乳がありなら豆乳もありだろうということで、酒粕豆乳甘酒も作ってみた。
無調整豆乳に酒粕を溶いただけ。甘い豆乳は苦手なので、これには砂糖を入れず、醤油をちょっと垂らしてみた。
ソイラテ的なイメージです。
飲んでみると、これはこれでおいしいけれど、なんだか具が欲しくなる味。
ということで、具と味噌を少々入れてみたら、おいしい酒粕豆乳汁になった。
あ、一周回って、普通の料理だ。
粕汁を豆乳で作るとおいしいという遠回りな発見。
普通に魚の粕漬けを作ってみる
続いて挑むのは、魚の粕漬け。これも普通の料理だ。
酒粕自体に塩分がほとんどないので、味噌を少量合わせて、それにみりんを入れて練ったものに、ブリの切り身を漬けてみた。
酒粕と味噌をみりんで伸ばして練ります。
漬けこむ程酒粕を使うのはもったいないので、塗りたくる方式。
一晩置いたものを水で洗って酒粕を落とし(落とさないと焦げます)、ジュジュっと焼いてみると、酒粕の香りがプーンとしてくる。
味噌漬けや照り焼きよりも塩分が薄く、なんだか上品な味に仕上がったブリの粕漬け。前に紹介した魚の糠漬けと正反対の味である。
とってもお上品。もうちょっと味噌の割合が多くてもよかったかな。
豚肉も粕漬けにしてみた
魚の次は肉に挑戦。豚のロースも酒粕に漬けてみた。お肉の粕漬けって食べたことがあるような、ないような。
豚ロースの粕漬け。こちらはあえて味噌なしで。
今回は味噌を入れずに酒粕とみりんだけで勝負。
フライパンを使ってバターで焼き、塩っ気が欲しいので仕上げに醤油を掛けて味と香りをプラス。
やっぱり粕漬けにした肉自体が上品に仕上がったので、バルサミコ酢やらなんやらで、もうちょっと凝ったソースを作ってもよかったか。食材と味付けの相性を考えるのって楽しいね。
酒粕のおかげか、ものすごく柔らかく焼き上がった。
酒粕入りポテトサラダという冒険
続いての料理は、そろそろちょっと冒険をして、酒粕入りのポテトサラダにチャレンジ。ほら、酒粕ってマッシュポテトみたいじゃないですか。
茹でたジャガイモと同量の酒粕をマヨネーズで合えて、塩、胡椒で味を調整。具は冷蔵庫にあったキュウリと魚肉ソーセージ。
見た目は普通のポテトサラダだけど、酒臭いという不思議。
自分で作りながら、これはどうかなと思ったのだが、酒粕の風味とマヨネーズがマッチして、あまり違和感のない味に仕上がった。
プーンと日本酒の香りがするポテトサラダ、おっさんだらけの立ち飲み屋でつまみにしたい味である。
酒粕とマヨネーズのディップ
ポテトサラダで酒粕とマヨネーズの相性の良さがわかったので、次はもっとシンプルに、酒粕とマヨネーズを同量混ぜて、生野菜のディップにしてみた。
生野菜というか、キュウリだ。
酒粕とマヨネーズの組み合わせ、ちょっと米の粒が残っているあたり、タルタルソースのような感じでおもしろい。胡椒やマスタードで味にアクセントをつけるともっといいかな。
プーンと日本酒の香りがする酒粕とマヨネーズのディップ、女性もいるような立ち飲み屋でつまみにしたい味である。
ということで、酒粕はイメージよりも予想よりも全然料理に使える。もっといろいろ試してみたいと思わせてくれる食材だ。
さて、これだけ酒粕を食べれば少しは痩せたかなと思ったが、体重の変化はほぼナシだった。もちろん痩せなかった理由は、いろいろ作った酒粕料理を食べすぎたから。この記事に載っていない料理もいろいろ食べたのだから、太らなかっただけヨシとしよう。細マッチョはまた来年。
ちなみにいい酒粕を手に入れる方法ですが、酒蔵までいかなくても、いい酒を置いている酒屋さんなら売っていることが多いようです。