※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2014年5月23日に掲載した記事の転載です。
江戸前の天麩羅における、初夏の超高級レア食材といえば、なんといってもギンポである。なかなか食べる機会のない魚だが、狙って釣ろうとすれば、簡単に釣れたりする。ギンポじゃなくてダイナンギンポだけど。
ダイナンギンポを釣るのは簡単です
今回狙うのはギンポではなくダイナンギンポ。ミニチュアサイズのウツボみたいな姿をしていて、たとえ釣れても逃がしてしまう人が多い魚である。ギンポとはちょっと違うけれど、釣り人はギンポと呼ぶので、以下ギンポで。
ギンポは確かに天麩羅で食べておいしいというのを知らないと、わざわざ持って帰って食べようとは思わない魚かもしれない。私はその逃がそうとするギンポをもらってでも食べたいのだが。
そんな知る人ぞ知る存在のギンポは、海岸に大きめの岩が転がっているような場所が大好きで、岩と岩の隙間に入り込んで生活をしている。
こんな防波堤が狙い目です。
ギンポの釣るための方法はいろいろあると思うのだが、私が好きな釣り方は、潮が引いている時間帯に岩場に乗りこみ、短い竿をギンポの潜んでいそうな場所に突っ込むというシンプルなもの。
狙う人が少ない魚なので、比較的簡単に釣れてくれるのだ。
こんなオモチャみたいな竿で充分です。
竿の先に糸付きの釣りバリを繋ぎ、そのハリの上にオモリをちょこんとつけただけの簡単な仕掛け。
なんだったら釣竿ではなく、海岸に落ちている棒きれとか、家にあるハタキの柄とかでも十分だったりする。
竿を入れても1000円くらいの仕掛け。
使うエサは、イカとかマグロとかオキアミとかアオイソメとか、あるいはその辺で捕まえたカニとか、まあなんでもいいけれど、今回はサバの切り身を切ったもの。軽く塩でしめてある。
一人前のサバの切り身があれば、一日分のエサとしては十分なので、エサ代は100円程度。
エビでタイを釣るならぬ、サバでギンポを釣るのである。
このくらいの大きさに切っておきます。
ギンポの釣り方
釣り方はとても簡単。ギンポのいそうな岩の隙間を見つけたら、そこにエサを沈めながら、竿先を突っ込んで待つだけ。
魚釣りというよりも、ザリガニ釣りみたいな世界である。
でもこれで、初夏の高級天麩羅ダネが釣れてしまうのだ。
こんな浅いところで釣れますよ。
しばらく待って、糸がグググンと引っ張られたらしめたもの。
1分くらい待ってなにも反応がなくても、竿先を引き抜いてみると、実は釣れていることも結構あったりする。
ダイレクトな引き!
うまいことギンポが掛かっていれば、仕掛けがとてもシンプルなので、その引きはとてもダイレクトに伝わってくる。
グングングンと引っ張る力に負けないように竿先を引き抜けば、一丁あがりだ。
よし、釣れた!
と思ったら、ギンポじゃなかった!
おっと、失敗。似ているけれどギンポじゃなかった。別の穴を探して再チャレンジしなくては。
この外道が釣れるくだりは書く必要がなかった気がするけれど、レポート記事は正直申告が私の信条。そうそううまくはいかないよね。
こんどこそは!
次はちゃんと釣ります!
今度こそはと別の穴にエサを沈め、しばらくして竿先を引っ張り込む感覚が伝わってきたところで竿先を引き抜くと、釣れたのは正真正銘のギンポである。
そうそう、これが釣りたかったのだ。
にょろーん。
でろーん。
どうだろう、このお世辞にもおいしそうと言えない姿。これがギンポなのである。まずそうでしょう。
小振りなウツボ、あるいはアマゾンあたりの古代魚の子供という感じだろうか。
釣り人があまり持ち帰らないという話も、大変よくわかる姿である。しかし、これがうまいのだ。
魚は見かけが悪いものほどうまいというのは逆の意味での偏見だと思うのだが(まずいものはまずいと思う)、このギンポに関しては、こんな姿なのにおいしいのである。
次々に穴を移動しながら、ギンポを釣っていく。
そして大物もゲット!
続いて釣れたのは、かなりの大物ギンポだった。
写真だとオオウナギくらいのサイズに見えるかもしれないが、しょせんギンポなので30センチ足らずなのだが、これはこれで十分な迫力である。
こいつがもし2メートルあったら、私は食われる自信がある。
尻尾ビターン!
アマゾンの怪魚を釣る!(本当は東京湾のギンポ)
そしてこんな浅場で釣れるのは…
カニ!見かけるとつい釣ってみたくなるんだよね。
この短い竿を使った釣り方は、潮の引いている干潮時限定なのだが、潮が満ちていてギンポのいそうな場所まで竿が届かない場合は、リール竿で狙えばいい。
これもびっくりするくらい簡単な仕掛けで、ギンポを狙って釣ることができる。
ギンポ釣り最大のコツは、ギンポがいそうな海岸や防波堤を見つけること。まあ海岸線をドライブすれば、結構いくらでもあるんだけどね。
こんなオモチャみたいな竿で十分釣れます。
仕掛けはこんな感じでオッケー。
穴にエサを沈めて釣るのは一緒。
この日は釣り場に来るのが遅くなってしまったため、すぐに潮が満ちてきてしまい、実質2時間くらいしか釣っていないのだが、それでも5匹のギンポを釣ることができた。夕飯には十分な量である。
サイズも最大で27センチと、ギンポとしてはかなりの大物なので大満足。食材としては20センチくらいが柔らかくて美味しいという気もするのだが、獲物としては大きいほうが気分がいい。
27センチのナイスギンポ!
やはりギンポの天麩羅は最高だ
釣ってきたギンポの食べ方は、もちろん天麩羅である。以前ウナギのように蒲焼にしてみたこともあるのだが、筋肉質過ぎてあまりおいしくなかった。この魚は天麩羅にしてこそ、その本領を発揮するのである。
ギンポはニョロニョロ系の魚なので、普通に捌こうとすると難しいため(しかもまだ生きている)、木のまな板に寝かせたら、頭を目打ちで固定するウナギ方式で捌くのがいい。私は関東人なので背開きだ。
そんな捌き方やったことないよという人も多いかと思うが、誰にでも初めての時はあるので問題なしだ。レッツチャレンジ!
よく切れる包丁があれば、簡単にできますよ。
頭と内臓と中骨を落とし、堅いヒレをキッチンバサミで落としたら下処理は完了。あとはカラッと揚げるだけだ。
このヒレを落とすという作業をだいたい毎年忘れるので、一口目はギンポのヒレが口の中に刺さるのが私の年中行事だったりする。
痛みで思い出すヒレの硬さ。これが私の初夏の味(ちょっと違うか)。
衣を付けてサクッと揚げましょう。皮側の衣を薄くするのがコツかな。
フキノトウとウドを添えてみました。これぞ旬の味。
一年振りに食べたギンポだが、やはりこれは最高の天麩羅ダネであると唸らざるを得ない味。旨味が濃く、身に弾力があり、皮がプリプリしているのだ。
他のどの魚にも似ていない、自分で釣らなければなかなか食べられない、数ある天麩羅ダネの中でもオンリーワンの味。素晴らしいったらありゃしない。
この身の厚みがうれしいね。
固いヒレも素揚げにするとおいしいよ。
潮干狩りで獲れるアサリや今回のギンポのような、年に一度か二度だけ自分で捕まえて食べる旬の味をいくつも知っていることが、私の小さな自慢なのである。
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