高野秀行さんの「辺境メシ ヤバそうだから食べてみた」に、世界遺産みたいな町の小さな食堂で、牛だったか水牛だったかの脊髄だか骨髄だかを食べる話があって(確認したら水牛の脊髄だった)、それがすごく衝撃的だった。背骨を通る太い脊髄、確かターメリックで黄色く染められていたと思う。
水牛の脊髄……。
いつか食べてみたいなと思いつつ、狂牛病の問題とかもあるかもしれないから一生食べる機会はこないだろうなと諦めていたのだが、豚骨スープを煮ようとしたときにそのことを思い出したのだ。
△「辺境メシ ヤバそうだから食べてみた」のカラーグラビアより
その日は二郎インスパイアのラーメンを作ろうと、肉屋で豚ガラを大量に買ってきていた。冷凍じゃない国産豚の背骨、大腿骨などのミックスだ。
とりあえず寸胴に水を入れて、血抜きをする。
そして余計な血を洗い流そうとしたら、なにやらゴムみたいなパーツが指に絡んで驚いた。
おおおおお、脊髄じゃないか。
もちろん牛や水牛じゃなくて豚の脊髄なので太くはないが、まぎれもなく脊髄である。なんだか大切な部位なんだろうなという感じがする。脊髄だもの。
高野さんはこれの牛版を食べたのか。
さてどうしよう。このままラーメンのスープにしてしまってもいいのだが、せっかくだから単体で試してみようかな。
引っ張るとペリペリと骨からはがれた。ひー。
さてどうやって食べようか。
薄い醤油のスープで軽く煮てみようかな。
鍋に入っちゃうと普通の食材っぽくなるね。
普通って何だろうね。
加熱したらキュリュキュルっと縮んだよ。
おおお。
食べてみると、なんだこら。これは知らない食べ物だ。
ぬおお、濃い。なんというか強い。これぞ下町のスタミナ食。
柔らかめのアキレス腱的な部位みたいなゼラチンだがクセはなく、すごくおいしいゴムという感じ。
でもゴムだけではなく、魚の白子とか卵っぽい部分もあり、いろんな食感が混ざり合っている。ギシュギシュのフワフワでネットリ。一口ごとに印象が違う。
これ、モツ煮にしたら相当旨いんじゃないだろうか。大量に集めるには豚ガラを何キロ買えばいいんだっていう話だが。
なんかすごいので、今後も豚骨を煮るときは、先に脊髄をそっと食べようと思う。
いやー、すごいわこれ。
なんというか身近なところでちょっとした冒険をした気分。
あ、もしかしたら牛のガラを買えば、牛の骨髄も手に入っちゃう?
あの肉屋に牛ガラ、売っているかな。
あ、ホルスタイン模様っていう意味じゃないですよ。
ごちそうさまでした。
※日本で流通する牛骨は、BSEの影響で脊髄が抜かれた状態のようです。
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