※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2014年3月28日に掲載した記事の転載です。
フィギュアスケートというスポーツは、選手の演技を見て楽しむもの、あるいは選手を目指す人がするものという、遠い世界のイメージがあったのだが、なんと大人が趣味として気軽に始めることもできるらしい。
フィギュアスケートを始めた人が書いた本
フィギュアスケートに関してまったく素人の私でも楽しめたソチオリンピックが終わり、現在はさいたまスーパーアリーナで世界選手権が開催中である。ソチの次がまさかの埼玉だ。
国内でも日本人選手の活躍で盛り上がりを見せているフィギュアスケートだが、フィギュアのリンクに立つ資格があるのは、選手と選手を目指す子供たちだけで、一般人(特に大人)にとっては、あくまで見て楽しむスポーツというイメージが強い。
しかし、そんな私の固定観念を打ち破ってくれる本を、私よりも若干年上のライターである佐倉美穂さんが書き下ろした。その本のタイトルは、「フィギュアスケートはじめました。」である。大人が始めていいのか、フィギュアスケートって。
著者の佐倉美穂さん

フィギュアスケートはじめました。: 大人でもはじめていいんだ! 教室・衣装選びから技のコツまで別世界に飛び込んだ体験記
- 作者: 佐倉美穂,みづき水脈,柳田貴志
- 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
- 発売日: 2013/11/15
- メディア: 単行本
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この本は、いわゆるフィギュアスケートの入門書ではなく、入門をした人の目線で書かれたエッセイ的な本である。4年前のバンクーバーオリンピックが終わってすぐ、30代半ばにしてフィギュアスケートの世界に足を踏み入れた佐倉さん本人の体験談をまとめたものだ。
フィギュアスケートを始めた理由とは
佐倉さんがなぜ大人になってからフィギュアスケートを始めたのか、じっくり話を聞いてみたくてスケートリンクに来てもらった。話を聞くだけならサイゼリアでもスタバでもいいのだが、私は今まで一切アイススケートの経験がなく、ローラースケートすらやったことがない。フィギュアを始めた人にインタビューするのだから、やはりリンクデビューくらいしなければいけないだろう。
これがブレードというやつか。厚みがあるので内側と外側にエッジがあるそうだ。目に映るものすべてが新鮮
「物心ついたときからフィギュアを見てはいたけれど、やっぱり習うという発想はありませんでした。あれは選手を目指す一部の人のためのスポーツで、ずっと見ているだけのものだったのですが、運動不足解消になにかやろうと大人の習い事を検索してみたら、そこにフィギュアスケートがあったんです! しかも家から近いところで低予算の教室が!! 大人でも習っていいの!!! ってすごいびっくりしました。」
お金はそんなに掛からない!
世の中に大人用のフィギュアスケート教室というものがあることにまず驚いたのだが、しかも低予算ってどういうことだろう。お金がないと始まらないイメージなのだが。
「ほとんどのスケートリンクには、大人用の教室もあります。私の通っているリンクは初級と中級があって、初級は本当に初めてスケート靴を履くような人でも大丈夫で、私もそこから通いました。教室は月ごとの契約で週一回。最初の週はやさしいことから始めて、だんだんとそれを応用していく感じで進み、最後の週は憧れのジャンプとかを少しやったりもします。私の教室は月謝が5,400円で、これに滑走代、保険代、貸靴代が入っています。都内だったらもっと高いようですが、この値段なら習うでしょう! ずっと憧れていた世界にちょっとでも近づけて、健康にも良くて、日焼けもしないんですよ!」
人類にとっては小さな一歩だが、私にとっては大きな一歩だ
フィギュアスケートというのはお金がかかるのは、あくまで選手を目指す場合の話で、趣味としてやる分には高い衣装を作る必要もないので、他の習い事と変わらない金額で楽しめるようだ。ちなみに普通のお客さんとしてリンクに来ても、滑走代と貸靴代だけで1,300円とられるので、月4回通ったら教室の月謝と200円しか変わらないぞ。
釣りでいえば、とりあえず船宿の貸し竿を使ってはじめるようなものだろうか。もしのめりこんでいったとしても、狙う魚にあわせて釣竿を買うように、ジャンプに合わせて靴を買うということはないので、釣りよりはお金がかからないかもしれない。
転ぶときは手をつかないで、体を丸めるといいそうです
「教室だと10人とか20人とかを同時に教えるため、個人的なアドバイスまではなかなかもらえないので、試合に出るためではなく、純粋にうまくなりたくて個人レッスンを受けるという人もいっぱいいます。教室の生徒同士だとフラットな関係で同じ趣味仲間ができるので、フィギュアについて熱く語りあえるのもポイント高いですね!」
そういえば私にも、シュノーケルをするためにどうしても泳げるようになりたくて、大人になってからスポーツクラブの水泳教室に通ったり、個人レッスンを受けた経験がある。水泳仲間はできなかったけど。
テレビで見る羽生選手や浅田選手の演技がすごすぎて、フィギュアスケートが特別なスポーツだと思い込んでいたのだが、天井の高さはともかくとして、敷居はそれほど高くないのかもしれない。
さっそく転んだ
どんな人がフィギュアスケートを始めるのか
それにしても、どんな人が大人になってからフィギュアスケートを始めるのだろう。
「選手のファンだから少しでも近づきたくてという人がやっぱり多いです。教室は男子も一緒なので、二人そろって一から始められるスポーツとして、御夫婦で習っている方もいます。めまいの持病を持っていて、ずっと回転していれば治るだろうとフィギュアを始めて、ずっとスピンの練習ばっかりしている人も。その人は教室で一番スピンが上手になりました。」
めまいを治すためにフィギュアですか。バス酔いを克服するために、遠足の前にでんぐり返しを何度もしたことを思い出すエピソードだ。なにか特別な理由がなくても、大人なんだから自分がやりたいと思ったらやればいいんだという、当たり前の話ですね。
ひょうたんという基本の動きをおしえてもらいました
見事なへっぴり腰ですね
4年間習ってみた感想は?
実際に4年間フィギュアスケートを習ってきて、その感想はどうだったのだろうか。4年も続けたのだから楽しかったのだろうけれど。
「昔からローラースケートをやっていたし、スケートもリンクで追いかけっことかをしていたので、教室でも最初から度胸はよかったです。フィギュアは本当に難しくて、少しずつしか上達しないけれど、毎回が楽しくて楽しくて。難しいけれど楽しい。半年くらいしてターンをするころに、貸靴を卒業してマイブーツを買っちゃいました。靴を変えたら全然違って、こんなに氷を感じられるものなんだって驚き、そこでまた世界が広がりました。テレビでずっと見ていたフィギュアマニアだけに、スピンとかジャンプとか、憧れていた動きが少しでもできると、飛び上がるくらい嬉しいです!」
マイブーツはフィギュアの世界を変えるそうです
フィギュアスケートの美容効果
本にも書かれていたが、どうやらフィギュアスケートは美容にも効果があるらしい。
「これはみんな驚くのですが、私は身長が3センチも伸びました。フィギュアの動きをすることで、骨盤の形がよくなるし、O脚やX脚が治るし、背筋もグッと伸びるから、今が人生で一番スタイルがいいかも。歩き方や階段の上り下りも綺麗になります。スケートをやっている人はみんな年齢よりも若く見えるんですよ。」
フィギュア選手のスタイルがいいのは、スタイルがいい人がやるスポーツだからだけではなく、フィギュアをやるからスタイルがよくなるという面もあるようだ。もしかしたら舞の海は、頭にシリコンを入れるのではなく、フィギュアを習うことで背が伸びて新弟子検査に受かったかもしれない。
確かにちょっと滑ってみただけでも、普段使わない筋肉を使いまくるので、翌日はしっかりと筋肉痛になった。確かにこれは効きそうだ。
片足1キロのスケート靴を履いて足を上げてバランスをとるんですよ
習うことで広がる観戦の楽しみ
フィギュアスケートを習うことで、観戦する楽しみも、より大きく広がったそうだ。
「フィギュアを自分で少しでもやることで、選手がどれだけすごいことをやっているのかが今まで以上にわかるから、観戦がすごくおもしろくなります。こんな体制でよくバランスくずさないよねーとか、よくそこまで脚が上がるよねーとか、好きな世界がもっと違う視点で見られるようになります。フィギュアを習わなくても、家の中でいいので選手がリンクでやっている姿勢をどこかにつかまりながらでもやってみれば、その難しさがちょっとわかりますよ。」
免許を持っていない人が見る自動車レースのF1と、多少はサーキットを走ったことのある人が見るF1では、見えてくる部分が違うというようなことだろうか。
選手のサインがいっぱいありました
ついでに現在開催している世界選手権の見どころを聞いてみよう。
「世界選手権は普通の年ならその年で一番の大イベントですが、オリンピックのある年はやはりみんなオリンピックに照準を合わせてくるので、その直後に行われる選手権では燃え尽きている選手も多く、大番狂わせが起きる可能性が高いんです。またオリンピックを最後に引退する選手も多いので、出場枠が限られているために今まで出られなかった選手が出場するので、新星がでてきます。もしかしたら世代の入れ替わる瞬間が見られるかもしれませんよ!」
一日に何回か氷を磨く時間があり、その直後はおもしろいくらいに滑るよ
「ジャンプには競技で認められているのが6種類あって、踏み切り方によって難易度が違うんです! アクセルジャンプは前向きで(熱い話は以下略……)。」
どうしても通える範囲にスケートリンクがあるということが前提になってしまうのだが、フィギュアを習う敷居は決して高くないそうなので、本当にフィギュアが好きなのであれば、佐倉さんのように一度はトライしてみるといいかもしれない。
私にはこれがお似合いかもしれない
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