先日の夕方、取材中の合間に携帯電話を確認すると、着信履歴があった。
発信元は通っている歯医者である。
現在進行形の虫歯があるというわけではないのだが、3か月に一回、定期検査で歯科衛生士さんに同じ部分の歯茎の写真を撮られて一喜一憂させられたり(前回と色や歯垢を比較されるがだいたい誤差の範囲)、歯の隙間にデンタルブロスをゴリゴリとされたり、歯茎のマッサージをされたりしている。予防歯科というやつだ。
なんだか派手好きな院長らしく、内装がどことなくリゾートホテルっぽく、天井には南国の砂浜で寝そべった視界(歯科医だけに)のような写真が貼られていたりする。別に治療ではないので、どちらかというとエステ気分だ。だいたい3000円くらい。バレンタインのシーズンにあたると小袋のガーナチョコをくれたりする。お礼はするべきだろうかと悩むが次の来院は3か月後なので悩まなくて大丈夫だ。悩む気ないけどさ。
で、そこからの着信である。
前にも一度こういうことがあったのだが、その時は私がうっかり歯医者の日を忘れていて、受付時間になっても現れない私に対する確認の電話だった。ほら、携帯のカレンダーアプリがその日の予定を3件までしか表示してくれないタイプで、夕方に入れた歯医者の予定が4件目に書かれていたから(カレンダーに「+1」と小さく書かれていたけど)、しょうがないよねー。
だって一日に4件も用事が入ることなんて、普段ないんだもん。
※カレンダーのイメージ
なんていう言い訳はもちろんできず、すみませんすみません忘れてましたすみませんと正直にあやまって予約日を変えてもらったのだ。
よくないですよね、連絡なしのドタキャン。
そんな失敗があった上での着信である。しかも時間は私が歯医者にいつも行く時間。うわぁ。
びびりながらカレンダーアプリを確認するが、歯医者の予約は一週間先だった。あれ。いやこれがそもそも入力の間違いなのかも。なんてったって3か月前に入れた予定だ、覚えちゃいない。診察券は自宅なので確認ができない。
こうなってしまうと、もう取材がまったく手につかない。相手の話が全然入ってこない。心ここにあらず。すぐ折り返しの電話をすればいいんだろうけれど、怒られるからヤダ。どうしよーと思いつつ保留。これが一番いけないんだけどね。
自宅に帰って診察券を確認しようと思いつつもすっかり忘れていた二日後の今日。また着信があったわけだ。あー。
電話って表情が見えないから怖いよね。でもこの電話に出ないと人生は前に進まないと受話器を取る。受話器っていうか携帯電話だけど。
「新年度になって担当者のスケジュールが変わりまして、恐れ入りますが予約変更のお願いを……」
先方都合の予約変更だった。なんだよ。
そんなのいつでも大丈夫ですよ!と、無駄に愛想よく予約時間を変更する。
いやー、よかった。いやよかったのかこれは。よく考えると特によいことがあった訳でもないのだが、なんだかすごく得した気分だった。うん、よかった。
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