私的標本:捕まえて食べる

玉置標本によるブログ『私的標本』です。 捕まえて食べたり、お出かけをしたり、やらなくても困らない挑戦などの記録。

サリーを着て、お菓子を食べて、バングラデシュを身近に感じよう

※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2009年9月9日に掲載した記事の転載です。

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浴衣の着付けを習う機会は意外と多いが、これがサリーの着方だとそうはない。ケーキの作り方も料理教室へいけば習えるけれど、バングラデシュのお菓子キールはなかなか教えてはもらえない。そんなサリーの着方とバングラデシュのお菓子作りの両方が体験できる魅力的なイベントに参加してきた。

シャプラニールの「もっと知りたい講座」

「サリーを着てバングラデシュのお菓子を食べよう」というイベントを企画したのは、市民による海外協力の会「シャプラニール」。シャプラニールはバングラデシュやネパールといった南アジアにおいて、行政や他の援助団体から「取り残された人々」の生活向上をサポートしているNGOである。

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市民による海外協力の会「シャプラニール」

そんなシャプラニールでは、【「遠い」を「近い」に。】をキーワードに、私たち日本人にとってどうしても遠い世界に感じてしまいがちな南アジアを、少しでも身近に感じてもらうきっかけとして、「もっと知りたい講座」というオープンなイベントを開催しているのだ。

まずは軽くバングラデシュの勉強から

この講座に集まったのは約10名の女性達。私以外全員女性である。テーマがサリーの着付けとお菓子作りだから、女性の方が多いかなとは思ったが、なんだか今年から共学になったばかりの元女子校に転校してきた気分である。ちなみになぜここまで女性ばっかりなのか、本質的な間違いにこの時点で私は気が付いていなかった。

まずはつい先日バングラデシュにいってきたというシャプラニールのスタッフから、バングラデシュの文化や現状などを、スライドや実際の道具などを交えながら教えていただく。こういう仕事以外のお勉強っていうのは学生時代以来なので、なかなか新鮮な気分になれる。

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勉強といっても堅苦しい感じではありません。

バングラデシュのお菓子「キール」を作る

ちょっとバングラデシュの文化に触れたところで、次はキールというバングラデシュのお菓子作り。このお菓子は村人が倒れていたお釈迦さまに食べさせたところ、悟りを開いたというすごい伝説を持っているお菓子で、おめでたい席などで食べるそうだ。

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キールに入れる砂糖の多さに一同びっくり。これでも日本向けに調整しているらしい。

おもな材料は牛乳、米、砂糖。牛乳で作ったおかゆを甘くしたものに、レーズンやカシューナッツなどを入れたもの。日本でいう甘酒みたいな感じだろうか。

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焦げやすいので、これが上手に作れる女性は、いい奥さんになれるといわれているそうです。

サリーの着付けで驚愕の事実に気がついた

キールを弱火で煮込んでいる間に、お待ちかねのサリー着付け教室がスタート。参加者の女性全員にサリー一式が貸し出されたのだが、私はここでようやく大いなる勘違いに気がついた。

サリーっていうのは浴衣みたいに男性用と女性用があると思っていたのだが、なんと女性用のみの服なのだ。そりゃこの講座に女性しかいない訳である。そういえばサリーを着ている男性って見たことないな。

京都の舞妓さん体験コーナーにうっかり並んでしまった外国人男性の気分。

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これはサリーの中に着る服。もちろん女性用だ。

ただ見ているのもつまらないので、性別の壁を気にせずサリーをきてやろうかとも一瞬思ったが、シャプラニール側が私のために男性用の衣装を用意してくれていたので、サリーではないけれど、無事バングラデシュの服を着られることになった。めでたしめでたし。

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サリーは5~8メートルの布。着方さえわかれば、この一枚の布が服になるのだ。

女性陣がシャプラニールのスタッフに教わりながらサリーを相手に悪戦苦闘をしている。この女性が着替えている空間の中で、自分の存在がセクハラになってはいないかと、なんだかヒヤヒヤしてきた。

男性の服は簡単です

さて男性である私の服は、頭から被るだけととてもシンプル。南アジアは男性の方が着替えが楽ということがわかった。この服、気にいった。

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スーツよりは似合っている気がする。

それに対してサリーという服はその見た目以上に着るのが難しいらしく、参加した女性陣は二度三度と着たり脱いだりして練習を繰り返している。私も着たり脱いだりしようかと思ったが、もちろん思っただけだ。

サリーを着て、輪になってキールを食べる

煮込んでいたキールができたところで、参加者全員が輪になっての試食会。女性陣がサリーを着て、おしゃべりをしながらお菓子を食べている姿に、なんとなくバングラデシュの女学生達が重なって見えた気がした。となると私の立場は担任の先生ですかね。いや用務員のおじさんか。

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「あなたのサリー何メートル?えー!お金持ちじゃーん!」みたいなガールズトークがされている(うそ)。

できあがったキールには、米の半分の重さの砂糖が入っているのだが、思っていたほどは甘くはない。ひと振りしてあるカルダモンの香りが効果的。やさしい口当たりで、あればあるだけ食べてしまいそうな味だ。バングラデシュの食事は私の口にあっているのかもしれない。

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風邪をひいた時とかによさそう。

南アジアが近づいた気がする

サリーとキールという衣と食の文化の一端を通じて、南アジアという地方、そしてバングラデシュという国を、今までよりも少しだけ身近に感じることができるようになった気がした一日だった。

おかげでサリーが女性用だけであるという事実は、もう一生忘れないだろう。

ありがとう、シャプラニール。

 

 

 

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