※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2013年10月16日に掲載した記事の転載です。
日本海に浮かぶ小さな離島、新潟県の粟島を観光してきた。人口357人(平成23年6月1日現在)のとても小さな島だが、おもしろいことが凝縮された場所だった。
粟島へタコを捕り目的でいってきた
私が粟島の存在を知ったのは、「磯ダコ捕りツアー」という、タコ捕りの大会がおこなわれているという話がきっかけである。今回の旅行はそのタコ捕りがメインだったのだが(その話はこちらで読めます)、粟島はタコ捕り以外にも魅力がたっぷりと詰まった島だった。
粟島の場所は、新潟県の佐渡島の上、山形県の飛島の下。日本海にポツンと浮かぶ、まさに離島の中の離島である。
粟島へのアクセスは、新潟県村上市にある岩船港からフェリーか高速船となる。車で行く場合、車はフェリーで運べないので(島内での観光に車はまったく必要ない)、岩船港にある無料駐車場に置いていく。電車で行く場合は、新潟駅から村上駅へと移動し、そこからタクシーかバスで岩船港へ。
東京から新潟駅までは、体力があれば新幹線以外に深夜バスを使うという手もあり、これだと朝一番の船に乗れるので、交通費が安い上にたっぷりと島を楽しめる。
村上駅から岩船港はバスかタクシーで。乗合タクシーを予約しておくとスムーズ。
ちなみに粟島といえばタコということで、ナビゲーターはMAPWというプロレス団体の、オクトパスデビルです。よろしくね。中身は猫だよ。
味わいのある粟島汽船乗り場。駐車場は無料。
こちらの高速船だとビューンと55分。
こちらのフェリーだとのんびり90分。
実際に行って納得したのですが、確かに冒険という言葉が似合う島でした。
同じく離島の佐渡島への旅行もそうなのだが、この船に乗ってボーっとする時間というのがとても好きで、電車やバスとは全く違う、ゆったりとした移動が味わえる。
粟島に到着。後日、あの坂道を自転車で一気に下ることになるのだ。
港の周りをゆったりと観光
粟島にはフェリーや高速船がやってくる粟島港のある内浦という集落と、島の反対側にある釜谷という2つの集落がある。内浦の集落は端から端まで歩いて15分くらいの小さな集落だが、釜谷の集落はさらに小さいらしい。
民宿はどちらの集落にもたくさんあるのだが、私が今回泊まったのは内浦の与平という民宿。
粟島は徒歩でぶらぶらしているだけで、とても気持ちのいい場所だった。島に到着して五分くらいで、「よし、また来よう!」と、心に決めてしまったくらい、うまく言えないけれど、いい感じの島なのである。
最高の天気で歓迎されました。
やってきました粟島。後ろに見えるのは本州の山々。
粟島港で民宿の方が出迎えてくれる。
港前を走る島一番のメインストリート。のどか!
コンビニやスーパーはないけれど、食品や雑貨を扱う商店はいくつかある。
漁協の直売所が一番大きなお店なのかな。新潟といえばセイヒョーのアイス。あえて桃太郎をはずしてのももえセレクト。
トイレのピクトがかわいかった。
味わいのある看板。
内浦と釜谷の二つの集落を行き来するためのコミュニティバスが走っている。釜谷の民宿に泊まる場合は、粟島港からの送迎もあり。
内浦と釜谷を結ぶコミュニティバス。
粟島港近くに、おと姫の湯という温泉がある。オーシャンビュー(漁港がみえる)。
おと姫温泉限定の超レアゆるキャラ、泡姫ちゃん。
小・中学校の前にある、島唯一の信号。ぜひ渡ろう。
あわしま屋という食堂で、地海苔がうれしい食堂のラーメンらしいラーメンをいただく。この味好き。
島では三輪自転車が流行っていた。
新しいシェアハウスが建っていて、ここに住んでいる人がちょっとうらやましい。いやだいぶ。
一番の目的は磯ダコ捕りツアーへの参加。
ナイスなタコがたくさんいた。タコ捕りには最高の島。
粟島はアオリイカ釣りの隠れた名所でもある。本土とは桁違いに釣れるらしい。
小さい魚くらいなら防波堤から簡単に釣れる。これはウマヅラハギかな。
イシダイの子供もたくさん釣れた。岩場でおこなう穴釣りも楽しいそうだ。
レンタサイクルで島を一周してみた
粟島港の周辺をぶらぶらと徒歩で散歩するだけでも楽しいのだが、役場にレンタサイクルがあるということなので、釜谷の集落側もぜひ見てみたかったので、せっかくなので自転車で島を一周してみることにした。島一周といっても一周が23キロの島なので、3時間くらいあれば周れるらしい。
自分の脚で島を一周するなんて、なんだか達成感があって楽しそうだ。
レンタサイクルは4時間まで500円。
自転車に乗るのが久しぶりで、脚力にちょっと不安があるけれど楽しみだ。
島を周るルートは、役場から北回りでも南回りでも当然いけるのだが、島の南側の坂が相当厳しいそうなので、北回りを勧められた。フェリーから見たあの坂のことだろう。確かにあれを自転車で上がるのは厳しそうだ。
集落周辺以外には、お店はおろか自動販売機すらないので、飲み物を用意しておくようにというアドバイスもいただいた。
なんだか道具を揃えて次の街を目指す感じが、子供の頃にやったロールプレイングゲームのようでワクワクする。
さあ、ママチャリに乗ったちょっとした冒険のはじまりだ。
ぐるっと一周して3時間くらい。なんだかすごろくっぽい島だ。ここで宝探しとかしたい。
観光案内所にある大きなマップが見やすい。場所によって朝日も夕日も見られる島なのか。
レッツ、サイクリング。
粟島の周遊道路は交通量が極端に少なく、自転車で走っていてとても気持ちがいい。
この日は天気がちょっと曇り気味なのが悔やまれるが、海を右手に眺めながら、島の空気をいっぱいに吸い込んで、のんびりと自転車を漕ぐという贅沢な時間。
アップダウンがまあまあ激しく、上り坂では自転車を押している時間も長かったが、歩く速度だから見えてくる景色というものもあり、それはそれで楽しめた。
いきなりあらわれた上り坂。無理無理無理。
脚力がないので、自転車を漕いでいる時間よりも押している時間が長かったかも。
美しい竹林。6月にはタケノコ採りツアーというのもあるらしい。
絶景スポットを回りながらの一周旅行
周遊道路は基本的に一本道なので、道に迷うということもなく、行く先々でチェックポイントのような形であらわれる絶景スポットを楽しんだ。この島だったら、ママチャリ、ランニング、海水浴(夏以外ならタコ捕りや穴釣りや温泉)という、ちょっとしたトライアスロンレースができるかもしれない。
夏場は島を一周する観光船もあるそうなので、ぜひ今度は海側から島を一周してみたい。
最東端となる鳥崎に到着。
写真だと全然伝わらない気持ちの良さ。おー、あそこでタコ捕りたい。
下り坂が最高に気持ちいい。粟島ママチャリ一周レースとかやらないかな。
粟島随一の眺望といわれている仏崎の展望台に到着。
展望台からの景色。観光船で海から眺めてみたい魅力的な海岸線。
自転車を降りて、いますぐ海まで下りてみたくなる(絶対転ぶので自粛)。
切石ヶ鼻を眺める。だんだんと晴れてきて、海の青さが際立ってきた。
海岸線に世界一かわいいネギ畑を発見!
釜谷の集落に到着
釜谷の集落の入り口に差し掛かると、キャンプ場への看板があったので寄り道をしてみた。だいぶ前に読んだ椎名誠の本で、粟島でのキャンプの様子が書かれていたが、その場所はここなのだろうか。
石がごろごろと転がる砂浜に、水場とトイレがあるだけのワイルドなキャンプ場だが、これがとても魅力的なのだ。民宿に泊まってのノホホンとした旅行もいいが、ここにテントを張っての不便なキャンプだって絶対に楽しいだろう。自分で釣ったり突いたりして捕まえた魚を、流木を集めた焚火で焼いて食べてみたい。
ちなみに観光案内所では、テントの貸し出しというのもやっているそうだ。
水場とトイレがあるだけの超ワイルドな釜谷キャンプ場。こう見えて海水浴場でもある。
キャンプ場でのキャンプを妄想しながら自転車を走らせていると、海岸線に釜谷の集落が見えてきた。
とても小さい集落だが、だからこそこっち側にも泊まってみたくなる。
ようやく釜谷の集落が見えてきた。
かわいい名前の食堂で早めの昼食。
名物の磯ラーメンには、タコやサザエがゴロゴロと入っていた。
釜谷で一息ついたら、次に目指すのは粟島の西の果て、八幡鼻展望台である。
ここから先がなかなかの上り坂で、釜谷で飲み物を買わなかったことを後悔することになる。
上り坂の先には下り坂があるのだという希望を胸に、ゆっくりと自転車を押していく。
釜谷からは上り坂が続いていく。あの防波堤から釣り糸を垂れたい。
沖の小さな岩場に渡してくれる船があるので、本格的な磯釣りもできる。
本格的に晴れてきた。景色最高。汗ダラダラ。
あ、磯ダコ捕りの人だ!今度はタコを捕りながら島を一周してみたい。
ロールプレイングゲームのような八幡鼻展望台への道
粟島の最西端にある八幡鼻展望台へは、自転車を降りて徒歩で500メートル程階段を登っていく必要がある。たった500メートルの距離だが、ここまで自転車できて疲れている体にとっては行くべきか迷うところだと思うが、ここは行った方がいい場所だった。
木でできた階段の遊歩道の雰囲気と、そこから見える景色が抜群で、まさにロールプレイングゲームの世界。コスプレをしてここにくれば、最高にかっこいい写真が撮れそうだ。
自転車を降りて八幡鼻の展望台を目指す。
コバルトブルーの海と鳥居岩。新潟なのに南国みたいだ。
ゲームの世界みたいな階段が延々と続いている。
ようやく展望台に到着。ここにはしゃべる石があるよ。
地球の丸さが伝わってくる広々とした絶景。
モスクワまで6300キロかー。
内浦へと下っていく
展望台から先は基本的に下り坂が続くので、気持ちよく自転車で走ることができた。ここまで上がってきた自分へのご褒美である。
高い場所から眺める海もきれいだが、坂を下ってだんだんと海が近づいてきて、ちょっと足を延ばせばすぐにたどり着けそうな距離になると、なんだか興奮してしまう。
今度来るときは、絶対にこの粟島の海でシュノーケルがしてみたい。
フェリーから見た、あの長い長い下り坂だ。
だんだん海との距離が近くなってくるのがうれしい。
ところでこの粟島には、昭和のはじめまで野生馬がいたそうで、その話を聞いていたため、草むらの向こうに白い馬が見えた時に、「まさかの野生馬!」と思ってしまったのだが、これはあわしま牧場という牧場の馬だった。
牧場というと山の上とか高原にあるイメージだが、このあわしま牧場は海沿いに位置していて、馬に乗っての海岸散歩などが楽しめる。
この牧場の話は、次回お届けいたします。
絶滅したはずの野生馬が!と、一瞬思った。
かつて野生馬が住んでいた粟島に、2011年にできたばかりのあわしま牧場。
あわしま牧場を抜けると、内浦のキャンプ場と海水浴場があり、充実の島一周ママチャリの旅が終了となる。
こんな感じでいろいろと道草をしても4時間弱。体力的にもちょうどいい距離だった。
内浦キャンプ場。こちらはバンガローもある。
そして内浦海水浴場。やっぱり夏にまた来たい。
新潟では海の家ではなく、浜茶屋というそうです。夏に来たらどんな雰囲気なんだろう。
アゲハチョウの幼虫みたいなかっこいい岩に大興奮。
たっぷりと寄り道をして四時間弱。無事にレンタル料500円で返却成功。
きっとまた来ると思います
小さい島なので、二泊三日だと飽きてしまうかなとも思ったのだが、ぜんぜんそんなことはなく、まだまだやりたいことがたくさん残っているという感じ。小さい島だからこそ、全部を満喫したくなる。渡り鳥が多いのでバードウォッチングをする人にとっては天国らしいし、船の上からの定置網見学もできるそうだ。
粟島は関東からだとちょっと遠い場所にあるけれど、その分現実から離れた非日常の冒険が待っていると思う。なにもしないで、ただボーっとしにいくのにもいいかもしれない。
春はタイなどの魚が一番おいしい時期で、夏はもちろんあのきれいな海での海水浴やキャンプは最高だろうし。秋はタコ捕りやアオリイカ釣りが楽しめるし、冬は防波堤からヤリイカが釣れたりもするそうだ。
次はどんな時期に、何をしに行くか、今から作戦を練っているのである。
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【参考サイト】
粟島観光協会