※『地球のココロ』というクローズしたサイトで、2010年12月3日に掲載した記事の転載です。
もし田舎暮らしをすることになったら絶対に欲しいアイテムが、薪のストーブである。自分で集めてきた材木を斧で割って薪を作り、冬場の暖房とする生活に憧れているのだが、実際のところはどうなのか、薪ストーブユーザーに話を聞いてみた。
田舎暮らしの先輩に話を伺う
今回話を伺ったのは、以前「田舎暮らしのインタビュー1:塩害と闘ってでも海のそばに住むことを選んだ人」という記事でお世話になったカズさん。
カズさんは外房を眺めながらゆっくりとした田舎暮らしを10年以上続けていて、冬場の暖房に薪ストーブを愛用している。
海と家の間になにもないカズさんの家。
薪は買わずにもらってくる
薪ストーブというくらいだから、当然燃料は薪な訳で、カズさんが住む外房では11月から3月の間、毎月だいたい軽トラック一台分もの薪を使うそうで、いついっても家の前には薪が山と積まれている。
薪はもちろんホームセンターなどで購入することもできるが、カズさんは廃品回収のように近所の農家などから不要な材木を集めてきて、それを割って薪としている。ペンキやビニールなどが混ざっている心配のある廃材を使わないのがカズさんのこだわり。
木をあげる側としては処分するのに時間やお金が掛かるのでもっていってもらえると助かるし、もらう側からすればタダで薪の材料を手に入れることができる。ちょっとした地元のネットワークと行動力があれば、両者が得をする関係になれるのだ。
梨農園から出る、伐採された老木や剪定された枝などが狙い目だとか。
薪ストーブのある家は、どこも薪が山積みになっているので一目でわかる。
薪以外に、こういった杉の枯れ葉やマツボックリなどが必要になる。
薪割りに挑戦してみた
集めてきた材木はチェーンソーで適当な長さに切りそろえ、斧でバシバシと割って薪にする。体力のあるカズさんは斧で割っているが、ご高齢の方や薪をもっと大量に必要とする本格的な雪国の人だと、専用の機械で割っている場合が多いとのこと。
ちなみに薪というのは割ってから最低一年、できれば二年間かけて乾燥させてから使うものだそうで、薪ストーブは燃料費こそ掛からなくても、家のスペースにも生活のペースにも、ゆとりがないと成り立たないようだ。
カズさん自慢の斧コレクション。炊事用の薪割りに適した小型の日本製、ユニークなデザインのアメリカ製、暖房に適した固い広葉樹を割るためのスウェーデン製などがある。薪ストーブにはスウェーデン製がおすすめとのこと。
薪ストーブについて教えてもらう前に、せっかくなので薪割りを体験させてもらうことにした。やはり薪ストーブを手に入れるのならば(そんな予定はまだないけれど)、カズさんのように自分で薪を用意できるようになりたい。
薪割りは力任せに斧を振り落とすのではなく、斧の重さを利用して振り子の原理で薪を割るというのだが、やってみるとこれがなかなか難しい。斧がきれいにあたらずに自分の足を割りそうになったり、ちょっと太い木を割ろうとすると、斧が刺さって抜けなくなる。五分もやったら腰が痛くなってきた。これで明日の筋肉痛決定。
慣れればそんなに疲れなくなるそうだが、どこを狙えばきれいに割れるのかを見極めた上で、そこに斧を落とすコントロールを身につける必要がある。私の場合、田舎暮らしを始める前に薪割りができる程度の体力をつけることが必要なようだ。
お金を使わない生活って、体を使う生活なんだよね。ああ腰が痛い。
人がやっているのをみると簡単そうに見えるんだけどね。
自分でやってみると全然割れないんだ。このまま田舎暮らしをはじめたら、薪割りの機械を買うか、薪自体を買うことになりそうだ。
煙突を天井に伸ばすか、壁から出すか
薪ストーブというと、サンタが降りてこられるような煙突が天井から出ているイメージがあったのだが(それはストーブじゃなくて暖炉かな)、煙突は天井に伸ばすタイプと壁から出すタイプがあるそうだ。
天井タイプは煙突がまっすぐなので中に煤(すす)が溜まりにくいというメリットがある。しかし長年利用すると雨漏りをする危険性があるそうだ。カズさんの家はこのタイプ。
カズさん所有の味のあるストーブ。窓のむこう側は雪山ではなくて太平洋だったりする。
屋根へと伸びる煙突。煙突が長い分、暖房効率はよさそうだ。
壁から煙突を出すタイプは、曲がっているところに煤が溜まりやすく、その煤が火災の原因になることも。ただ煙突が低いので掃除などのメンテナンスは楽。
「田舎暮らしのインタビュー3:海を眺めながらロボットを作る人」の石井さん家はこのタイプ。
どちらも一長一短あって迷うところだが、結論を出すのはまだ先でいいのでとりあえず保留にしておく。
薪ストーブの使い方
薪ストーブの火の付け方は、焚火などと基本的には同じ。まず杉の枯れ葉やマツボックリなどの燃えやすいものを置き、その周りに細い薪からだんだんと太い薪が燃えていくように組んでいく。これが上手にできれば火種はマッチ一本で十分。
火力の調整は当然マニュアル。薪の量や空気窓の開閉で中の温度を調整。温度が高くなりすぎるとストーブが痛むので、どんどん燃やせばいいというものではない。
エアコンやガスストーブならスイッチ一つですむけれど、薪ストーブだと暖をとるためにこの面倒臭さだ。でもこの面倒臭さがいいんだろうな。やっぱり薪ストーブの生活って楽しそうだ。
この火をつける準備が楽しそう。
ストーブの火の前にいると、部屋の空気が暖まるよりも前に、体が直接ホカホカと温まっていく感じがする。
薪ストーブは料理もできる
薪ストーブのいいところは、家の暖房になるだけでなく、その熱で料理もできるというところ。ストーブの上に鍋を置いておけばお湯が沸く感覚は子供のころに灯油ストーブを使っていたのでイメージできるのだが、時間のかかる煮込み料理などもガス代を気にせず作り放題とはうらやましい。
カズさんの場合、薪ストーブが活躍する冬場は、オカズはもちろんご飯を炊くのも全部薪ストーブでやってしまうそうだ。
薪ストーブだと沸かしたお湯すら普通よりおいしそうに思える。
いい感じに燃えた炭を七輪に移せば、網焼きなども楽しめる。これで自家製の干物を炙ると最高。
地図を見ながらどこの地方に住むべきか迷ってみたり、田舎で自分ができる仕事はないかと探してみたり、庭にどんな木を植えるべきか考えてみたり、薪ストーブを使った冬場の暮らしを想像してみたり。
このように今日も田舎暮らしに憧れる自分を楽しみながら、特に不満もなく埼玉のベットタウンで生活をしている。